塩ビ管の「VP」と「VU」は太さの違いではない — 外径は同じで、JIS K 6741が変えているのは厚さと設計圧力
ホームセンターの塩ビ管売り場には、同じ「呼び径50」の棚にVPとVUが並んでいます。持ち比べるとVUのほうが明らかに軽い。それで「VUは細い管なのだろう」と思うと、外径を測って混乱することになります。どちらも60.0mmちょうど。VPとVUは、太さの違いではありません。
違うのは壁の厚さです。呼び径50のVPは厚さ4.1mm、VUは1.8mm。外側はぴったり同じで、内側だけが違う。この設計は偶然ではなく、JIS K 6741が意図して選んだ形です。そしてその厚さの差の根っこにあるのが、「設計圧力」という区分です。
資料には何が書かれているか — 設計圧力が管を7種に分ける
JIS K 6741:2016の正式名称は「硬質ポリ塩化ビニル管」。適用範囲は「主に一般流体輸送配管に用いる硬質ポリ塩化ビニル管及び耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管」で、水道用の管は「JIS K 6742による」として最初から除かれています。塩ビ管の規格がひとつではない、という事実がまず入口です。日本規格協会の書誌によれば、現行版は2016年10月20日の発行で、前版の2007年版を改正したもの。直近では2026年6月22日に「確認」されており、10年前の版がいまも現役の規格として維持されています。
種類の表には、VPとVUのほかにも記号が並びます。VM、耐衝撃性のHIVP、建物内排水用のIDVP、埋設排下水用のISVP、水輸送用及び圧送排下水用のIWVP。そして各種類には設計圧力の区分が割り当てられています。VPとHIVPは0〜1.0MPa。VMは0〜0.8MPa。VUは0〜0.6MPa。排水専用のIDVPとISVPは0MPa、つまり圧力をかけない前提の管です。
JIS K 6741:2016(kikakurui.com転載より要旨)|資料の記述(要旨)管の種類はVP・VM・VU・HIVP・IDVP・ISVP・IWVPに区分され、それぞれに設計圧力が定められている。VP・HIVP=0〜1.0MPa、VM=0〜0.8MPa、VU=0〜0.6MPa、IDVP・ISVP=0MPa。寸法表では呼び径ごとに外径が一つ定まり、種類によって厚さが変わる。
寸法表を種類間で見比べると、設計の骨格が見えます。呼び径50の外径は60.0mmで、VPでもVUでも変わりません。厚さだけがVP=4.1mm、VU=1.8mmと2倍以上違う。呼び径75なら外径89.0mmにVP=5.5mm、VU=2.7mm。呼び径100なら外径114.0mmにVP=6.6mm、VU=3.1mm。呼び径150なら外径165.0mmにVP=8.9mm、VU=5.1mm。どの呼び径でも、外径は一つ、厚さは圧力区分の数だけあります。
定義の表
| 試験条件の項目 | 規定されている値・条件 | 注記 |
|---|---|---|
| 規格の名称 | 硬質ポリ塩化ビニル管(PVC-U pipes) 二次資料で確認 | 2016年10月20日発行。前版2007年の改正。2026年6月22日確認で有効 |
| 適用範囲 | 主に一般流体輸送配管。水道用はJIS K 6742へ 二次資料で確認 | 塩ビ管の規格は用途で分かれている |
| 種類 | VP・VM・VU・HIVP・IDVP・ISVP・IWVP 二次資料で確認 | HIVPは耐衝撃性。IDVP/ISVPは排水用 |
| 設計圧力 | VP/HIVP=0〜1.0MPa・VM=0〜0.8MPa・VU=0〜0.6MPa 二次資料で確認 | IDVP・ISVPは0MPa(無圧)。記号の実体はこの圧力区分 |
| 呼び径50 | 外径60.0mm/厚さ VP=4.1・VU=1.8mm 二次資料で確認 | 外径は共通、厚さが圧力区分で変わる |
| 呼び径75 | 外径89.0mm/厚さ VP=5.5・VU=2.7mm 二次資料で確認 | 同上 |
| 呼び径100 | 外径114.0mm/厚さ VP=6.6・VU=3.1mm 二次資料で確認 | 同上 |
| 呼び径150 | 外径165.0mm/厚さ VP=8.9・VU=5.1mm 二次資料で確認 | 同上 |
この数字をどう読むか — 記号は太さではなく圧力の名前
まず、記号の正体から。VPとVUの違いを「厚肉と薄肉」と説明するのは結果の描写で、原因は設計圧力の区分にあります。1.0MPaまで見込む管は壁を厚くとる必要があり、0.6MPaまで、あるいは無圧の排水にしか使わない管は薄くてよい。カタログや売り場で「VP=給水など圧力配管用、VU=排水用」と使い分けられているのは、この区分が実務の言葉に翻訳されたものです。記号は太さの名前ではなく、その管が何MPaを引き受ける設計かの名前です。
次に面白いのは、外径を固定して内径を変えるという選択です。内径を揃えて外側に肉を盛るという逆の設計もあり得たはずですが、規格は外径共通を選びました。外径が同じなら、管を受ける継手の口径、壁や床を貫通させる穴、切断や面取りの工具を種類間で揃えられます。配管は管単体ではなく継手・支持・貫通部を含むシステムなので、システム側の互換性を優先した形です。その代償として、同じ呼び径50でもVPとVUでは内側の断面が違います。
どれくらい違うのか、確認した数値から計算してみます。呼び径50の内径は、外径から厚さの2倍を引くと、VPが60.0−2×4.1=51.8mm、VUが60.0−2×1.8=56.4mm。円の断面積に直すと約2,107mm²と約2,498mm²で、同じ「呼び50」を名乗りながら、VUの内側はVPより2割近く広いことになります(この内径・断面積は規格の外径と厚さからの単純計算で、規格が内径として規定している値ではありません)。
無圧の水を重力で流す排水管にとって、壁が薄いことは軽さと材料の節約だけでなく、同じ外径でより広い水路を確保できることでもあります。VUが排水用であることと薄肉であることは、偶然並んでいるのではないわけです。
つまり「呼び径」は、外径でも内径でもない「呼称」です。呼びの数字が実寸とずれる構図は、ベアリング「6203」の03が15mmではなく17mmを指すのと同型で、記号は寸法表と対にして初めて読めます。値そのものを引きたいときのために、寸法表は姉妹サイトの早見表に一覧があります。
そしてこの設計は、実務にひとつ罠を残します。外径が同じということは、VU管がVP用の継手に物理的には収まってしまうということでもあります。規格が圧力で区分した2つの管は、現場では見た目も挿し心地もほとんど区別がつきません。だからこそ管体には記号が表示され、色や刻印で見分ける文化が発達しています。規格の中では設計圧力という明確な線で分かれているものが、モノとしては60.0mmの同じ外径に収束しています。この「規格上は別物、寸法上は同寸」というねじれが、VPとVUをめぐる混乱のほぼすべての源です。
もうひとつ、塩ビ管の世界地図も描いておきます。K 6741は「一般流体輸送配管」の規格で、蛇口から出る水道水の管は別の規格、JIS K 6742の領域です。K 6741の種類表にあるHIVPは耐衝撃性を高めた管で、寒冷時や衝撃に弱いという硬質塩ビの弱点への答えですが、水道用として使われるHIVPはK 6742側で規定されます。ひとくちに「塩ビ管」と言っても、少なくとも2つの規格と7つの種類記号が背後に控えていて、売り場の「VP・VU」はその氷山の一角です。
そして、この「同じ見た目に複数の規格・区分が畳み込まれている」構図は、塩ビ管に限った話ではありません。ねじの「M8」という表記だけではピッチが決まらないのは、省略された側の情報を規格の既定値が運んでいるからでした。塩ビ管の「呼び50」も同じで、数字の後ろにVPかVUかという圧力区分が付いて、はじめて厚さと内側の寸法が確定します。カタログの記号はそれ単体では完結せず、規格という辞書を引いて完成する省略記法です。そう考えると、VPとVUの2文字は、見た目よりずっと多くを背負っています。
あなたの条件ならこう読み替える
どの管種を選ぶか、既設の管に何を継ぐか——それを決めるのは設計図書と施工基準、水道なら水道事業者の基準です。この記事が確かめたのは、VPとVUが同じ外径の別物であること、その「別」の中身が厚さであること、そしてその厚さを決めているのが設計圧力の区分であること。そこまでです。売り場の棚で軽いほうの管を持ち上げたとき、その軽さは「安い普及品」の軽さではなく、「圧力を引き受けない設計」の軽さです。
規格本文の確認は民間転載サイト(kikakurui.com)によるもので、規格票の原本は購入していない。厚さが設計圧力からどう導かれたか(設計式・安全率)と、大口径側の種類の範囲は確認できていない。継手規格(K 6739・K 6743)とJIS K 6742の本文も未読。いずれも原本にあたるべき事項である。
この数字について、よく調べられている疑問
同じ呼び径なら外径は同一です。呼び径50ならVPもVUも外径60.0mm。違うのは厚さで、VPは4.1mm、VUは1.8mmです(JIS K 6741:2016)。太さではなく、壁の厚さと、それが見込む設計圧力(VP=0〜1.0MPa、VU=0〜0.6MPa)が違います。
外径を揃えれば、継手・工具・穴あけ寸法を種類間で共有できるからです。圧力に応じて必要な壁の厚さは変わるので、外径固定のまま厚さを内側に増やす設計になっています。その結果、同じ呼び径でもVPとVUでは内側の断面が異なります。
JIS K 6741はVUの設計圧力を0〜0.6MPa、VPを0〜1.0MPaと区分しており、VUは薄肉の低圧側の管です。また水道用の管はそもそもJIS K 6742(水道用硬質ポリ塩化ビニル管)の領域で、K 6741の適用範囲から明示的に除かれています。どの管を使うかは設計図書と水道事業者の基準によります。
この記事の限界
- 規格本文の確認は民間の転載サイト(kikakurui.com)によるもので、日本規格協会の規格票原本(有償・和文32ページ)は購入していない。転載の誤植の可能性は排除できないため、寸法値は姉妹サイトの早見表作成時に照合した値と突き合わせて採用した。
- 種類ごとの厚さがどの水圧試験・どの安全率から導かれたか(管の設計式)は、開いた範囲からは確認できなかった。設計圧力の数値と厚さの対応関係は「規格がそう定めている」ことまでを書き、導出には立ち入っていない。
- 大口径側(呼び径300以上)でどの種類がどこまで規定されているかは、転載ページの表の読み取りに自信が持てなかったため本記事では扱わない。
- VM(設計圧力0〜0.8MPa)の実際の流通・用途は確認できていない。市中で「VP・VU」の2種が語られることが多い理由も、本記事の確認範囲の外である。
- 継手の規格(JIS K 6739・K 6743など)と、水道用のJIS K 6742の本文は読んでいない。VP用・VU用の継手を混用してよいかは継手側の規格と施工基準の話であり、本記事では扱わない。
- 実際の配管にどの種類を使うべきかの選定・施工判断は、設計図書・水道事業者・施工基準によるもので、本記事の外である。
出典
- JIS K 6741:2016 硬質ポリ塩化ビニル管(本文転載)/ kikakurui.com / 2026-08-16 確認
- JIS K 6741:2016 書誌ページ/ 日本規格協会 / 2026-08-16 確認
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この記事を書いた人
Yamachiki / 運営・調査・執筆X @Yamachikichan1
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