カタログのその数字は、
どの試験でついたのか。
ボルトの「強度区分10.9」。はめあいの「H7」。LED電球の「60W形相当」。エアコンの「6畳用」。 図面でも、現場でも、売り場でも、わたしたちが読んでいる数字には例外なく出どころがあります。 測定方法を定めたJIS、業界団体の自主基準、法令にもとづく告示。 そして数字には必ず試験条件がついています。
問題は、その試験条件が読者に届いていないことです。規格票は有償で、ほとんどの人は読みません。 メーカーは自社の数字を説明できますが、「その前提はあなたの現場と違います」とは書けません。 早見表は数値を引くための道具であって、由来を語る場所ではありません。
このサイトは、その隙間に座ります。表に載っている数字を、それを作った試験条件まで遡って確認し、 「この数字はこういう条件で決まった。あなたの条件はここが違う。だから、こう読み替える」までを記録します。 感想も、レビューも、ランキングも書きません。書くのは、規格番号・制定年・試験条件・前提条件のズレ、 そして条件別の読み替えだけです。
数値そのものを引きたいときは、姉妹サイトの早見表.net をどうぞ。早見表が「数値を引く」場所、このサイトが「その数値の出どころを読む」場所です。
扱っている数字
ボルトの強度区分「10.9」、はめあい公差「H7」、表面粗さ「Ra 1.6」、ベアリングの呼び番号「6203」。図面と現場で毎日使われている数字が、どのJISの、どんな試験と定義から出ているのかを遡ります。
「IP67」「E26」「抵抗カラーコード」「K熱電対」。部品と部材に振られた記号と数値の、規格上の定義と試験条件を確認します。※電気工事(電線の許容電流・ブレーカー容量・接地抵抗など、施工の判断が絡む数値)は扱いません。
エアコンの「6畳用」、空気清浄機の「適用床面積25畳」、冷媒の「GWP 675」。空気を動かす機械の性能値が、どの規格の、どんな試験室で測られたのかを原典まで遡り、部屋の条件にどう読み替えるかまで示します。
「CAT6A」「HDMI 2.1」「USB PD 100W」「V30」。規格の名前が世代を表しているのか、性能を保証しているのか。何が必須で何が任意なのかを、策定団体の文書まで戻して読みます。
LED電球の「60W形相当」、掃除機の「吸込仕事率200W」、紙の「A4」、靴の「25.5cm」。暮らしの中の数字と記号にも、それを決めた規格と試験条件があります。
記事
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ボルトの「10.9」は引張強さ1000MPaではない — JIS B 1051が定める呼び値と合格ライン
ボルト頭部の刻印「10.9」は呼び引張強さ1000MPa・呼び耐力900MPaを指すが、JIS B 1051:2014(ISO 898-1:2013と一致)が合否判定に使う最小引張強さは1040MPa、最小耐力は940MPaで、刻印の数字とは一致しない。その差がどこから来たかを一次資料で追う。
強度区分 10.9JIS B 1051:2014(炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-強度区分を規定したボルト,小ねじ及び植込みボルト-並目ねじ及び細目ねじ) - 電気・電子
「IPX7」と「IPX8」に上下関係はない — IP保護等級を決める試験条件と、真水・常温という前提
IPX7は水深1m・30分の一時的潜水、IPX8は「7より厳しい条件」をメーカーと使用者が取り決める等級で、上下関係ではない。IPX1〜8の試験水はすべて常温の真水で、海水も石けん水も湯も入っていない。根拠のJIS C 0920は2026年1月20日に廃止され、JIS C 60529:2026へ移行した。
IPX7 / IPX8JIS C 60529:2026(電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード))/IEC 60529 - IT・通信
LANケーブルの「CAT6A」が保証しているのは10Gbpsではなく500MHzという帯域
CAT5e=100MHz、CAT6=250MHz、CAT6A=500MHz。配線規格が定めているのは伝送周波数帯域であり、1Gbps・10Gbpsという速度はIEEE 802.3が別に決めている。しかもその帯域は「100mのチャネル」を前提に測った値である。この二層構造を規格の書誌から読む。
CAT6A(クラスEA)=500MHzISO/IEC 11801-1:2017 / JIS X 5150-1:2021(IDT)/ ANSI/TIA-568.2 シリーズ - 機械・材料
図面の「Ra 1.6」は何を測った数字か──JIS B 0601とカットオフ値0.8mm
図面に「Ra 1.6」とだけ書かれているとき、JIS B 0633:2001の既定によりカットオフ値λc=0.8mm、基準長さ0.8mm、評価長さ4mmが自動的に適用される。Ra 3.2はλc=2.5mm・評価長さ12.5mmで測られ、両者は同じ設定の測定値ではない。その構造を、規格の書誌情報と公開解説で確認した。
Ra 1.6(μm)JIS B 0601:2013(製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語,定義及び表面性状パラメータ) - 空調・冷凍
エアコンの「6〜9畳」は、無断熱の木造和室と鉄筋集合住宅の差でできている
エアコンの「冷房6〜9畳」は、JEM-1447が引く1965年の熱負荷値に基づく。6畳側は木造平屋南向き和室の220W/m²、9畳側は鉄筋集合住宅中間層の145W/m²。店頭の「おもに6畳」のほうには根拠規格がない。「1964年のJIS」という通説がどこまで正しいかを一次資料で確認した。
冷房 おもに6畳(畳数のめやす 6〜9畳/10〜15m²)JEM-1447(日本電機工業会規格・1989年9月1日制定、改正なし)/熱負荷値の出典は HASS 108/109-1965(空気調和・衛生工学会規格。資料により番号表記が揺れる) - 空調・冷凍
空気清浄機の「適用床面積 25畳」は、何を30分で除去した数字か
空気清浄機の「適用床面積25畳」は、粉じん濃度1.25mg/m³の空気を30分で0.15mg/m³まで下げられる部屋の広さを示す数字で、空気をきれいに保てる広さではない。測定は20〜32m³の試験室で行う。根拠のJEM1467は2026年3月19日に改正され、算出条件が定常状態の比較へ変わった。
適用床面積 25畳JEM1467(日本電機工業会規格「家庭用空気清浄機」) - 住まいと生活
LED電球の「60W形相当」は、810lmという一本の線で引かれている
LED電球の「60形相当」は、定格初光束810lm以上であれば名乗れる表示。根拠は日本照明工業会のガイドB008で、810lmは消費電力54Wの一般電球60形(白色仕上げ)の光束に由来する。同じ810lmでも配光角は約200度から約280度まで開き、明るさの感じ方は一致しない。
電球60形相当(810lm 以上)日本照明工業会ガイド B008「電球形LEDランプ性能表示等のガイドライン」(現行 B008:2013) - 住まいと生活
掃除機の「吸込仕事率」は管の先で測る数字で、JISはコードレスを対象から外している
掃除機の「吸込仕事率580W」は、JIS C 9108の式(0.01666×風量×真空度)の最大値。床ブラシを外し、延長管の先端で測る。一方、コードレス機の「最大吸込仕事率200W」はJISの適用範囲外の自主表示で、測定条件は公開されていない。同じWでも土俵が違う。
吸込仕事率 580W/200WJIS C 9108:2017(電気掃除機)/電気機械器具品質表示規程(消費者庁)。※コードレス機の200Wは、どちらの適用範囲にも入っていない
このサイトの約束
カタログの数字は、必ず出どころと試験条件まで遡ってから書きます。遡れなかったときは 「遡れなかった」と書きます。遡らずに書くことは、このサイトでは記事ではありません。
使ってもいない製品を「使った」とは書きません。測っていない数値を「測った」とは書きません。 当サイトは実測設備を持たないため、答えられない問いには「答えられない」と書き、実測を持つ機関へ読者を送ります。
製品の優劣は書きません。書けるのは「A社は◯◯という条件で表示し、B社は別の条件で表示している。 両者は同じ土俵にない」までです。おすすめもランキングも作りません。
全記事の冒頭に「この記事で確認した一次資料」を、末尾に「この記事の限界」と「訂正履歴」を置いています。読者はわたしを信じる必要がありません。原文を確認すればよいのです。