LED電球の「60W形相当」は、810lmという一本の線で引かれている

カタログの数字
電球60形相当(810lm 以上)
根拠となる規格
日本照明工業会ガイド B008「電球形LEDランプ性能表示等のガイドライン」(現行 B008:2013)
その数字を作った試験条件
JIS C 7501 の白色仕上げ一般電球60形(消費電力54W)の定格初光束 810lm を下限とし、これを上回れば「電球60形相当」を表示できる。配光は条件に入っていない
前提が決まった年
2010年7月16日制定(2011年に2回、2013年7月12日に改正)
「電球60形相当(810lm 以上)」という数字の家系図。カタログの表示から、それを定めた規格と試験条件までを辿ったもの。

LED電球のパッケージに刷られた「60W形相当」は、明るさそのものではなく、定格初光束810lm以上という一本の線を越えたことを示す表示である。日本照明工業会(旧・日本電球工業会)が2010年7月16日に制定したガイド B008「電球形LEDランプ性能表示等のガイドライン」が、一般電球の「形」ごとに光束の下限を決めており、60形なら810lm、50形なら640lm、40形なら485lm、100形なら1520lmが境界になっている(付表1)。810lmを1lmでも上回れば「60形相当」を名乗れるし、1520lmの製品も理屈のうえでは60形相当の条件を満たしている。

ここで一つ、言葉を正しておく必要がある。B008 が定めている表記は「電球60形相当」であって、「60W形相当」ではない。Wの付く書き方はガイドに存在しない。パナソニックとオーム電機の製品ページは実際に「60形相当」と書いており、「60W形相当」と書いているのは東芝ライテックの技術解説のような流通側の表記である。以下では、B008 が定める区分としては「60形相当」、売り場で目にする表示としては「60W形相当」と書き分ける。

そして、この線が縛っているのはランプが出す光の総量だけである。代替表示の条件(B008 5項)に配光は入っていない。

資料には何が書かれているか

日本照明工業会が公開している「電球形LEDランプガイドブック(第2版)」のPDFに、その対応表がそのまま載っている。表2-1「一般電球(E26口金)との関係」は、左に白熱電球の形、右にLED電球が満たすべき全光束を並べた、ごく短い表である。

日本照明工業会「電球形LEDランプガイドブック(第2版)」表2-1・表2-2|資料の記述(要旨)

E26口金の一般電球に対する電球形LEDランプの全光束の目安は、20形が170lm以上、30形が325lm以上、40形が485lm以上、60形が810lm以上、80形が1160lm以上、100形が1520lm以上、150形が2400lm以上、200形が3330lm以上。E17口金の小形電球に対しては、25形が230lm以上、40形が440lm以上、50形が600lm以上、60形が760lm以上、75形が1000lm以上、100形が1430lm以上とされる。

同じ区分は、行政の側にも置かれている。資源エネルギー庁の省エネ型製品情報サイトが配布する省エネ性能カタログの「電球」編は、掲載製品を明るさで区分する際に「電球60形相当(810lm〜)」といったラベルを使っている。ただし、この点は正直に書いておく。当サイトは当該PDFを取得したものの、本文の数値がテキストとして取り出せず、区分表を自分の目で確認できていない。ラベルの使用は検索結果からの傍証にとどまる。この記事が810lmの根拠として立っているのは、あくまで B008 の付表1のほうである。

東芝ライテックの技術解説ページは「照明工業会ガイドB-008」を根拠として名指しし、60W形相当=810lm以上と書いている。工業会の自主基準にすぎない区分が、国の製品情報サイトの検索軸にも、メーカーの技術解説にも、そのまま流れ込んでいる。

ここで、調査の途中で判明した食い違いを一つ記録しておく。LED電球の「W形相当」の根拠としてJEL 801という規格番号が挙げられることがあるが、これは誤りである。日本照明工業会が公開しているJEL 801の追補1のPDFを開くと、表題は「一般照明用GX16t-5口金付 直管LEDランプシステム」であり、2010年10月8日制定、2016年2月12日に追補1が出ている。直管形の規格であって、電球形とは対象が違う。電球形の表示を定めているのは、その2か月半前に出たガイドB008のほうである。番号が近く、制定年が同じ2010年であることが、取り違えを生んでいるように見える。

810lmはどこから来た数字か

810という値は、LEDのために新しく作られたものではない。白熱電球の側から持ってきた数字である。B008 の 5.1 は、代替表示の条件をこう書いている。

日本照明工業会 ガイド B008 5.1(要旨)|資料の記述(要旨)

「◯形相当」の代替表示は、JIS C 7501 の白色仕上げタイプ、およびそれを補完するために追加した市販ランプの定格初光束(付表1)以上であることを条件とする。

つまり、810lmが白熱電球の側から来た数字であることは、推測ではなく工業会自身が本文に書いている。JIS C 7501「一般照明用白熱電球」が定める光束を見ると、E26口金・定格電圧100Vの一般電球のうち、ガラス球が無色透明(クリア)の60Wタイプは850lmである。一方、内面に白色の仕上げを施した、いわゆるシリカ電球の「60形」は、定格消費電力が54Wで、光束が810lmになる。パナソニックが長く売っていたLW100V54Wがこれにあたり、型番の中に54Wという数字がそのまま入っている。B008 が下限に選んだのは、クリアの850lmではなく、白色仕上げの810lmのほうだった。家庭で普通に使われていたのはこちらだからである。

つまり「60W形相当」の60Wは、消費電力60Wの電球を指してはいない。家庭で最も普及していた、消費電力54Wの白色塗装の「60形」電球を指している。省エネ性能カタログが白熱電球との比較をするとき、一貫して「54Wの白熱電球」を基準に置いて年間電気料金を計算しているのも、同じ電球を見ているからである。カタログの「W形」は電力の表示ではなく、白熱電球時代のサイズと明るさの等級を表す符牒として残った。

試験条件の項目規定されている値・条件注記
光束の測定量全光束(ランプが全方向に放つ光の総量、単位lm) 一次資料で確認ある一点の明るさ(照度、lx)でも、真下の明るさでもない
対応する白熱電球一般電球60形・E26口金・定格100V・白色仕上げ/定格消費電力54W・定格初光束810lm 一次資料で確認B008 5.1 が「JIS C 7501 の白色仕上げタイプ及びそれを補完するために追加した市販ランプの定格初光束以上」と明記。無色透明(クリア)の60Wタイプは850lmで、810lmではない
表示の条件定格初光束が810lm以上であること 一次資料で確認上限はない。上回る分にはいくらでも上回ってよい
ランプの種類による違い一般電球60形相当=810lm以上/ボール電球60形相当=700lm以上/小形電球60形相当=760lm以上 一次資料で確認下限を決めているのは口金ではなくランプの種類。付表3(ボール電球)はE26/25口金にもE17/20口金にも適用される。同じE26口金に「60形相当」が2つ存在する
周囲温度25±2℃(JIS C 8157の性能試験) 二次資料で確認密閉形器具の内部やダウンライトの奥は、この温度に収まらないことがある
電源電圧定格電圧に対し±0.2%以内に調整して測定 二次資料で確認実際の宅内電圧の変動幅とは別の話
配光代替表示(B008 5項)の条件には入っていない 一次資料で確認ただしB008 6.2.1は、照明効果を比較して表示する場合には配光が相似していることを明示すること、直下照度のみによる比較は行わないことを求めている。工業会は配光の問題を認識したうえで、「◯形相当」の条件には入れなかった
定格寿命の基準光束が初期の70%を維持する期間 一次資料で確認寿命の終わりに近づいた810lmの製品は、810lmを出していない
810lmという値が成立する条件

筆者はこう読んだ

この表示の設計は、ひとつの問いに対してだけ、きれいに答えている。「今まで60形の電球をつけていたソケットに、どれを買えばいいか」という問いである。売り場に立った人間が、手元にある古い電球の口金と形を見て、同じ棚から代わりを選ぶ。その一点においては、810lmという線引きはよく効く。B008 の序文が挙げている動機も、そこにある。

日本照明工業会 ガイド B008 序文(要旨)|資料の記述(要旨)

これら(性能表示)が未統一で表示されたのでは、メーカー相互の製品比較に支障が生じることがあり、消費者の混乱を招くおそれがある。

線を一本引いたことで、少なくとも「60形相当と書いてあるのに500lmしかない」という商品は棚から消えた。数字の出どころとしては、まっとうな仕事をしている。

問題は、この線が光束という一次元の量だけで引かれていることにある。定格初光束は、ランプを球で包んで全方向の光を足し合わせた総量である。総量が同じでも、それをどこへ配るかは製品の自由に任されている。そしてこの自由の幅が、実際にはかなり大きい。パナソニックのパルックLED電球プレミアXの60形相当は光束810lm・配光角約260度、オーム電機の広配光タイプ(品番06-3083)は同じ810lmで配光角約200度以上、同社の全方向タイプ(品番06-4708)に至っては光束860lm・配光角約280度である。最後の製品は、810lmを50lm上回りながら、やはり「60形相当」と表示されている。買う側から見れば、パッケージの一番大きな文字はどれも「60形相当」で、200度と280度の差は仕様表の奥にしか書かれていない。

配光角というのは、JIS C 8157の定義では「口金上方鉛直点灯における下方光度の2分の1の範囲を表す全角」である。真下の明るさを基準に、その半分まで落ちる角度までを数える。同規格は光の広がりで形式を分けており、全般配光形(記号G)は180度以上、準全般配光形(記号H)は90度以上180度未満とされる。白熱電球のフィラメントは細い線が高温で光る、ほぼ点光源に近い発光体で、ガラス球のほぼ全方向へ光が出る。対してLED電球は、平らな基板の上にLEDが並び、その下に点灯回路と放熱体が詰まっている。構造上、口金の側へは光が回りにくい。

工業会のガイドブック自身が、この点を書いている。ただし、書き方はこちらが引きたくなるより公平である。

日本照明工業会「電球形LEDランプガイドブック(第2版)」p.142-143(要旨)|資料の記述(要旨)

LEDモジュールの光には指向性があるため、電球形LEDランプの配光は比較的狭くなる傾向にある。しかし最近では、白熱電球の光の広がり方に近づけた構造をもつ電球形LEDランプも主流になっており、白熱電球から取り換えた場合に違和感がほとんど感じられないようになってきている。

後半を落として前半だけを引くのはフェアではないので、そのまま載せた。実際、確認した製品の配光角は約200度から約280度で、下は準全般配光形の側に寄り、上は白熱電球にかなり近い。工業会の言うとおり、広配光の製品は増えている。問題は、その広い製品と狭い製品が、パッケージの上では同じ「60形相当」だということのほうにある。

そして B008 は、配光に無関心だったわけではない。6.2.1 は、照明効果を比較して表示する場合には、比較する両者の配光が相似していることを明確に示すこと、直下照度のみによる比較は行わないことを求めている。工業会は配光の問題を認識していた。そのうえで、「◯形相当」という代替表示の条件には、配光を入れなかった。入れれば表示が複雑になり、売り場で使えなくなるからだろう。線を一本にするという判断と引き換えに、配光は表示の外へ落ちた。

ここから、「60W形相当なのに暗い」という体感の正体が見えてくる。天井から吊るしたペンダントや、上向きに光を返すシェードのある器具では、電球が上方向に出した光が天井や壁で反射して部屋に降りてくる。この反射光は部屋の明るさのかなりの部分を担っている。配光角の狭い製品に替えると、真下のテーブルの上は以前と変わらないか明るいくらいなのに、天井が暗く沈み、部屋全体としては暗く感じる。全光束は810lmで守られているのに、その光の行き先が変わっているからである。カタログの数字は嘘をついていない。ただ、読者が知りたかった「部屋が明るいかどうか」という問いに、その数字は最初から答える設計になっていない。

同じ構図は、この種の代替表示にくり返し現れる。空気清浄機の適用床面積が、規定の試験室で所定の粉じんを除去できる広さであって、その空気質を保ち続けられる広さではないのと同じように、810lmは「白熱電球60形と総量で並ぶ」ことだけを保証し、「同じように明るく見える」ことは保証していない。掃除機の吸込仕事率が、ゴミの取れ具合ではなく、規定の条件下での空気の仕事量であるのと同じ関係である。ひとつの数字で代表させると、代表から漏れた性質が、そのまま使用者の側の違和感として残る。

もうひとつ、時間軸の問題がある。810lmは定格初光束、つまり点灯を始めた時期の値である。B008 も用語の定義で「全光束(定格初光束)」と書いており、この量が初期値であることを明示している。JIS C 8157はLEDランプの寿命を「光束が初期の70%を維持する期間」と定義しており、各社が公表する定格寿命40000時間は、その70%まで落ちるまでの時間を指している。810lmちょうどの製品を買った場合、寿命の終わりに近いランプが出しているのは 810 × 0.7 = 567lm、570lm前後になる(これは資料に載っている値ではなく、当サイトが規格の定義から計算した数字である)。570lmは、B008 付表1でいえば40形相当の485lmと50形相当の640lmの間に落ちる。白熱電球はフィラメントが切れて突然消えるから、暗くなったことに気づく前に交換していた。LED電球は消えないまま、10年かけて静かに暗くなる。この差は、どちらのカタログにも「明るさ」としては書かれない。

規格を責める話ではない。ガイドB008が引いた線は、白熱電球からの置き換えという当時の課題に対しては、必要で十分だった。ずれているのは、前提のほうである。2010年の売り場は「白熱電球を持ってきた人に代替品を渡す」場所だったが、いま電球を買う人の多くは、白熱電球を使ったことがない。手元に比較対象の実物がない人間にとって、「60W形相当」は基準点として機能しない。そのとき残るのは810lmという生の数字と、仕様表の隅にある配光角だけである。

あなたの条件ならこう読み替える

メーカーカタログの表記脚注に書かれている測定条件
パナソニック60形相当パルックLED電球プレミアX(空間全体を照らすタイプ)。全光束810lm、消費電力7.3〜7.4W、配光角約260度
東芝ライテック60W形相当技術解説ページで「照明工業会ガイドB-008」を根拠と明記。60W形相当を810lm以上とする
オーム電機60形相当(広配光)品番06-3083。全光束810lm、消費電力7.3W、配光角約200度以上
オーム電機60形相当(全方向)品番06-4708。全光束860lm、消費電力7.1W、配光角約280度。同じ表示で810lmを上回る
横断主要各社のカタログ表記(E26口金・60形相当・一般電球タイプ)各社の公開カタログ・製品ページの記載を確認したもの。製品の優劣を比較したものではない。
その電球は、どんな器具に、どう入りますか?
天井から吊るすペンダント・上方向に開いたシェード・裸電球
「60W形相当」の文字ではなく、配光角の数値を仕様表で見る。260度以上・全方向タイプ・全般配光形(形式記号G)と書かれたものを選ぶ
部屋の明るさの相当部分を天井と壁の反射光が担っている。配光角が200度台前半の製品に替えると、全光束810lmは守られていても上方向の光が減り、部屋全体が暗く沈む
ダウンライト・スポットライト・下向きのデスクスタンド
配光角の狭い製品(準全般配光形、下方向タイプ)でも実用上の不足は出にくい。ただし断熱材施工器具ならSB・SGI・SG形の対応表示を確認する
器具が最初から下方向の光しか使わない設計なので、上方向へ配る光は器具内で吸われて捨てられている。配光角の広さに対価を払う理由が薄い
浴室灯・玄関灯など、ガラスやプラスチックで全体が覆われた密閉形器具
「密閉形器具対応」の表示があるものを選ぶ。加えて、810lmぎりぎりではなく余裕のある製品を検討する
LEDは温度が上がると効率が落ち、光束が下がる特性がある。工業会のガイドブックも周囲温度の上昇でランプの光束が低下する傾向を示している。全光束の試験は周囲温度25±2℃で行われており、器具内の温度はその前提の外にある
調光器(明るさ調節つまみ)のついた器具や回路
調光対応と明記された製品に限る。非対応品は選択肢から外す
工業会は調光機能非対応タイプを調光回路で使わないよう警告している。これは明るさの問題ではなく製品側の適合の問題で、810lmという数字とは別の軸にある
E17口金の小形電球のソケット、またはボール電球(丸い大きな球)の器具
810lmを基準にしない。小形電球の60形相当は760lm以上、ボール電球の60形相当は700lm以上が下限
B008 は付表を、一般電球・小形電球・ボール電球・反射形でそれぞれ分けている。下限を決めているのは口金ではなくランプの種類で、同じE26口金にも「一般電球60形相当(810lm)」と「ボール電球60形相当(700lm)」の2つが存在する

読み替えの軸は、結局ふたつしかない。ひとつは、その器具が上方向の光を使っているかどうか。使っているなら配光角を見る意味があり、使っていないなら見る意味は薄い。もうひとつは、いま何lmの光がその部屋に落ちているのかを知っているかどうか。白熱電球の60形から替えるのであれば810lmが等価点だが、すでにLED電球を使っていて「もう少し明るく」と考えているなら、白熱電球の等級表はもう座標として役に立たない。810lm、1160lm、1520lmという段の並びを、そのままlmの数直線として読むほうが早い。

2010年7月16日
日本電球工業会(現・日本照明工業会)がガイド B008「電球形LEDランプ性能表示等のガイドライン」を制定。「◯形相当」表示と定格初光束の下限の対応が定まる 一次資料で確認
2010年10月8日
JEL 801「一般照明用GX16t-5口金付 直管LEDランプシステム」制定。直管形の規格で、電球形の表示とは別系統 一次資料で確認
2011年
JIS C 8157「一般照明用電球形LEDランプ(電源電圧50V超)-性能要求事項」制定。配光角の定義、全般配光形・準全般配光形の区分が置かれる 二次資料で確認
2011〜2013年
B008 が3回改正される(2011年3月11日・2011年10月14日・2013年7月12日)。当サイトが読んだ現行版は B008:2013 一次資料で確認
2013年
電球形LEDランプが省エネ法トップランナー制度の対象機器に追加される(目標年度2017年度。対象範囲は一般電球形E26口金・小形電球形E17口金と説明されている) 二次資料で確認
2017年
JIS C 8158「一般照明用電球形LEDランプ(電源電圧50V超)」が制定され、省エネ法の対象範囲の判定にも用いられる 二次資料で確認
2019年
新たな省エネ基準が施行。目標年度2027年度、基準エネルギー消費効率は昼光色・昼白色・白色で110.0lm/W、温白色・電球色で98.6lm/W 一次資料で確認
年表「W形相当」表示をめぐる年表

省エネ法の側から見ると、この表示にはもうひとつ層がある。トップランナー制度の基準は「基準エネルギー消費効率」をlm/W、つまり全光束を消費電力で割った値で定めており、2027年度目標で昼光色・昼白色・白色が110.0lm/W、温白色・電球色が98.6lm/Wとされている。ここでも評価されているのは全光束であって、配光ではない。行政も工業会も、光の総量という一次元で製品を並べる方式を採り続けている。実装として合理的ではあるが、その一次元に落ちない性質、つまり光がどこへ飛ぶかは、制度のどこにも記録されない。カタログの数字が答えられる範囲は、こうして上流で決まっている。

なお、自分の部屋の広さや器具の数から必要なlmを見積もりたい場合は、姉妹サイトの暮らしの計算室に計算の導線がある。当サイトは計算機を持たず、数字の出どころだけを記録している。

この数字について、よく調べられている疑問

60W形相当と60形相当は違うものですか

表示としては同じ区分を指しています。日本照明工業会のガイドは一般電球の「形」(サイズと光束の区分)に対する代替表示として全光束の下限を定めており、E26口金の60形なら810lm以上です。パナソニックとオーム電機は「60形相当」、東芝ライテックは「60W形相当」と書いていますが、下限のルーメン値は同じものを参照しています。

60W形相当なのに前の電球より暗く感じるのはなぜですか

光束が同じでも、光をどの方向に配るかが違うためです。白熱電球のフィラメントはほぼ全方向に光りますが、LED電球は基板が平面のため口金側に光が回りにくく、配光角は製品によって約200度から約280度まで開きます。配光角の狭い製品は真下を照らす一方で天井や壁に届く光が減り、部屋全体の反射光が落ちます。B008 は代替表示の条件を定格初光束の下限だけで定めており、配光は条件に入っていません。カタログのlm値だけでは、この差は読み取れません。

60形相当の下限は、どの電球でも810lmですか

違います。下限を決めているのは口金ではなく、ランプの種類です。B008 の付表1(一般電球代替表示区分)では電球60形相当が810lm以上ですが、付表3(ボール電球代替表示区分)ではボール電球60形相当が700lm以上とされ、この表はE26/25口金にもE17/20口金にも適用されます。つまり同じE26口金でも、一般電球の60形相当(810lm)とボール電球の60形相当(700lm)が別々に存在します。小形電球(E17口金)の60形相当は760lm以上です。「60形相当」という同じ言葉が、ランプの種類ごとに違う線を指しています。

JEL 801がLED電球の「W形相当」を定めた規格ではないのですか

違います。JEL 801は「一般照明用GX16t-5口金付 直管LEDランプシステム」という表題で、2010年10月8日に制定された直管形LEDランプの規格です。電球形LEDランプの「W形相当」表示を定めているのは、同年7月16日制定の日本照明工業会ガイドB008「電球形LEDランプ性能表示等のガイドライン」で、両者は別の文書です。

この記事の限界

  • ガイド B008 の原文PDFは、日本照明工業会サイトの元URLが現在404を返す。当サイトはアーカイブ(Wayback Machine)から取得した版を読んでおり、工業会が現に配布している最新版と一字一句同一であることは確認していない。読んだ版の表記は B008:2013 である。
  • 資源エネルギー庁の省エネ性能カタログ「電球」編のPDFは、数値がテキストとして抽出できず、本文中の区分表を直接確認できなかった。「電球60形相当(810lm〜)」という区分ラベルの使用は傍証にとどまる。この記事の810lmの根拠は、あくまで B008 の付表1である。
  • JIS C 7501(一般照明用白熱電球)およびJIS C 8157/C 8158(電球形LEDランプ)の規格票本文は有償頒布であり、JISCの閲覧サービスも閲覧のみである。本記事が参照した光束値・配光形の定義は非公式ミラーサイトの転載本文によるもので、日本規格協会が頒布する正本との一字一句の照合はしていない。
  • 「60形相当」の下限を810lmと決めた審議の経緯(なぜ850lmではなく810lmを採ったのか)を記した公開資料には到達していない。B008 5.1 が「JIS C 7501 の白色仕上げタイプ及びそれを補完するために追加した市販ランプの定格初光束以上」と定めていることまでは原文で確認できるが、その線引きに至る議論そのものは公開されていない。
  • アイリスオーヤマの公式製品ページはHTTP 403で取得できず、同社のパッケージ表記・配光角を一次情報として確認できなかった。このため各社横断表から同社を外している。
  • 「同じ810lmでも暗く感じる」現象について、配光角・演色性・器具形状のどれがどの程度寄与するかを定量的に示した公開資料は確認できていない。本記事は各社が公表する配光角の数値差を示すにとどめ、体感の差の内訳には踏み込んでいない。当サイトは測光設備を持たず、光束・照度の実測は行っていない。

出典

  1. 電球形LEDランプ性能表示等のガイドライン(ガイド B008)/ 日本照明工業会(工業会サイトの元URLは404。アーカイブより取得) / 2026-07-13 確認
  2. 電球形LEDランプガイドブック(第2版)/ 日本照明工業会 / 2026-07-13 確認
  3. 省エネ性能カタログ「電球」/ 資源エネルギー庁 省エネ型製品情報サイト / 2026-07-13 確認
  4. LED照明の規定・ガイドライン/ 日本照明工業会 / 2026-07-13 確認
  5. JEL 801 追補1:2016 一般照明用GX16t-5口金付 直管LEDランプシステム/ 日本照明工業会 / 2026-07-13 確認
  6. 【LED電球】なぜ明るさをワット(W)ではなくルーメン(lm)で表記しているのですか/ パナソニック / 2026-07-13 確認
  7. パルック LED電球 プレミアX(E26口金 一般電球タイプ)/ パナソニック / 2026-07-13 確認
  8. LED電球 E26 60形相当(品番06-3083 / 06-4708)/ オーム電機 / 2026-07-13 確認

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この記事を書いた人

Yamachiki / 運営・調査・執筆X @Yamachikichan1

規格・告示・業界基準が定める数値について、その出どころと試験条件を一次資料まで遡って記録しています。記事に書いたすべての数値には、根拠となる資料の所在(資料名・規格番号・発行者・URL・確認日)を添えています。確認できたことと、確認できなかったことを分けて書くことを、このサイトの基本方針としています。

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