ボルトの「10.9」は引張強さ1000MPaではない — JIS B 1051が定める呼び値と合格ライン

カタログの数字
強度区分 10.9
根拠となる規格
JIS B 1051:2014(炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-強度区分を規定したボルト,小ねじ及び植込みボルト-並目ねじ及び細目ねじ)
その数字を作った試験条件
10℃〜35℃の環境温度で、製品そのままのボルトを引張・くさび引張・保証荷重・硬さの各試験にかけたときの値
前提が決まった年
1972年制定/2014年にISO 898-1:2013(第5版)と一致する内容へ改正
「強度区分 10.9」という数字の家系図。カタログの表示から、それを定めた規格と試験条件までを辿ったもの。

ボルトの頭に打たれた「10.9」は、呼び引張強さ 1000 MPa、呼び耐力 900 MPa を意味する。点の左の 10 が引張強さ 1000 MPa の 1/100、右の 9 が「耐力 ÷ 引張強さ = 0.9」を 10 倍した数字である。ここまでは、ねじ商社のハンドブックにもメーカーの技術資料にも同じことが書いてある。

ところが、その 10.9 のボルトが規格に合格したかどうかを判定するとき、試験機が見る数字は 1000 MPa ではない。最小引張強さ 1040 MPa、最小耐力 940 MPa である。刻印から逆算した数値と、合否ラインの数値が一致していない。40 MPa のずれは誤差ではなく、規格がそう決めている。

この記事は、その 40 MPa がどこから来たのかを追う。

資料には何が書かれているか

根拠規格は JIS B 1051:2014。正式表題は「炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-強度区分を規定したボルト,小ねじ及び植込みボルト-並目ねじ及び細目ねじ」で、日本規格協会が公開しているプレビューの表紙にこの表題と (ISO 898-1:2013) の併記がある。制定は昭和47年(1972年)6月1日、最新の改正は平成26年(2014年)9月22日。原案作成者は日本ねじ研究協会と日本規格協会である。

JIS B 1051:2014 序文・箇条1(日本規格協会 公開プレビュー)|資料の記述(要旨)

この規格は、2013年に第5版として発行された ISO 898-1 を基に、技術的内容および構成を変更することなく作成されている。規定するのは、10℃〜35℃の環境温度範囲で試験を行ったときの、炭素鋼製および合金鋼製のボルト・小ねじ・植込みボルトの機械的および物理的性質。適用範囲は M1.6〜M39 の並目ねじと M8×1〜M39×3 の細目ねじ。注記として、この規格が規定するおねじ部品は −50℃〜+150℃の温度範囲で使用するものとし、それを外れる温度域では材料の専門家の助言を受けることを推奨している。

規格票の目次を見ると、箇条5 が「強度区分の表し方」、箇条9 に「9.1 ボルト及び小ねじのくさび引張試験」「9.2 おねじ部品の引張強さ Rm を求めるための引張試験」「9.6 おねじ部品の保証荷重試験」「9.7 機械加工試験片の引張試験」「9.9 硬さ試験」が並ぶ。強度区分という一つの記号の裏に、少なくとも五種類の異なる試験がぶら下がっている。

符号化のルールそのものは、箇条5 に書かれている。規格票の本文は有償のため当サイトは読んでいないが、商社の公開ハンドブックが同じ内容を書いている。

由良産商「ねじの参考書」(鋼製ボルト・小ねじの強度区分の表し方 JIS B 1051 抜粋)|資料の記述(要旨)

おねじ部品の強度区分を表す記号は、点で区切られた二つの数字で構成する。点の左側の数字は「呼び引張強さ」の1/100の値。点の右側の数字は「呼び下降伏応力」または「呼び耐力」と「呼び引張強さ」との比の10倍の値。10.9 であれば、呼び引張強さ 1000 MPa の 1/100 で 10、呼び耐力 900 MPa ÷ 呼び引張強さ 1000 MPa = 0.9 の10倍で 9 となる。

注意して読むと、この定義に出てくる数字はすべて「呼び」である。呼び引張強さ、呼び耐力、呼び下降伏応力。記号は呼び値だけで組み立てられていて、最小値は一度も出てこない。

そして規格の数値表は、呼び値と最小値を別の行として持っている。浪速螺子が公開している表では、10.9 の行に呼び引張強さ 1000 と最小引張強さ 1040 が並び、呼び耐力 900 と最小耐力 940 が並ぶ。12.9 なら呼び 1200 に対して最小 1220、呼び耐力 1080 に対して最小 1100。8.8 は呼び 800 に対して、呼び径 16mm 以下なら最小 800、16mm を超えると最小 830 になる。同じ「8.8」の刻印でも、径によって合格ラインが違う。

この二重構造がいつ生まれたかは、規格を作った側が書き残している。

日本ねじ研究協会誌 44巻「JIS B 1051 の改正案について」(分科会報告)|資料の記述(要旨)

1985年の改正で、ISO 898-1:1978 に整合させる大改正が行われた。このとき強度区分 14.9 が廃止され、引張強さは最大値を廃止して最小値だけとし、N/mm² の値に ISO 898-1:1978 を採用したので引張強さ・降伏点(または耐力)・保証荷重の最小値が僅かに変わった。そのうえで、引張強さと降伏点(または耐力)に「呼び」の値を便宜上決めた、と記されている。

「便宜上決めた」。刻印の数字は、試験で出た値を丸めたものではなく、記号を作るために後から置かれた基準値である。

1972
JIS B 1051(ボルト・小ねじの機械的性質)制定。ISO推薦規格 R 898/I:1968 に整合するI欄と、日本独自のT付き強度区分(4T〜7T)のII欄を併記した。 一次資料で確認
1976
重力単位 kgf から SI単位への換算値を併記。規定の実体は制定時から変わっていない。 一次資料で確認
1985
ISO 898-1:1978 に整合。14.9を廃止、引張強さの最大値を廃止して最小値だけとし、引張強さと降伏点に「呼び」の値を便宜上決めた。ビッカース硬さと表面硬さの規定を追加。 一次資料で確認
1991
ISO 898-1:1988 に整合。引張破断荷重が500kN以下の製品は、必ず製品状態で引張試験・くさび引張試験・保証荷重試験を行うよう規定を強化。12.9は遅れ破壊の危険があるとして、引張応力が働く面に白色のりん濃化層があってはならないと規定した。 一次資料で確認
2000
ISO 898-1:1999 と一致する形式に改正。日本独自だったT付き強度区分の附属書を廃止。試験の環境温度を10〜35℃に改めた。保証荷重試験の遊びねじ部の長さを6Pから1dに変更。 一次資料で確認
2014
ISO 898-1:2013(第5版)と一致する内容に改正。強度区分8.8以上のりん・硫黄の最大含有量を0.035%から0.025%に引き下げ。形状的要因で負荷能力が低い部品は強度区分の前に0を付けて「08.8」と表示する規定を追加。 一次資料で確認
年表JIS B 1051 の制定・改正(日本ねじ研究協会の解説による)

試験条件/定義

試験条件の項目規定されている値・条件注記
試験の環境温度10℃〜35℃ 一次資料で確認規格票の箇条1に明記。この範囲外では規定の性質を満たさないことがある。使用温度は −50℃〜+150℃ とされている。
引張強さ Rm の求め方最大荷重 ÷ 有効断面積 As 二次資料で確認有効断面積はねじ山の形状から計算する仮想断面積で、実際にその断面が存在するわけではない。
試験に使うもの製品そのまま(FFグループ)/機械加工試験片(MPグループ) 一次資料で確認2014年改正で試験プログラムがこの2グループに再編された。引張破断荷重500kN以下の製品は製品状態での試験が必須(1991年改正で強化)。
呼び引張強さ(10.9)1000 MPa 一次資料で確認強度区分の記号を作るための基準値。1985年改正で便宜上決められた。
最小引張強さ(10.9)1040 MPa 二次資料で確認合否判定に使う値。刻印から逆算した1000 MPaより40 MPa高い。
最小耐力(10.9)940 MPa 二次資料で確認呼び耐力は900 MPa。下降伏点が測定できないものは0.2%耐力による。
保証荷重応力(10.9)830 MPa 二次資料で確認最小耐力940 MPaの0.88倍。応力比は規格の表に区分ごとに書かれており、4.6では0.94、10.9と12.9では0.88。
保証荷重試験の手順荷重を15秒間保持し、除荷後に永久伸びがないことを確認 二次資料で確認破断させない試験。±12.5μmの測定不確かさの範囲内で塑性伸びがなければ合格。試験速度は3mm/minを超えない。
くさび引張試験座面に角度αの硬化したくさびを挟んで軸方向に引く 二次資料で確認頭部と軸のつなぎ目の健全性を見る。くさびの硬さは45HRC以上。角度は呼び径だけでは決まらず、円筒部長さと強度区分の3つで決まる。円筒部長さ ls が2d以上なら、3≤d≤20 で10°(4.6〜10.9)・6°(12.9)、20<d≤39 で6°(4.6〜10.9)・4°(12.9)。全ねじ及び ls<2d では、d≤20 で6°(4.6〜10.9)・4°(12.9)、20<d≤39 は4°。
くさび引張強さの要求値引張強さの最小値と同じ 二次資料で確認くさびで斜めに引いても、まっすぐ引いたときと同じ強さを要求している。
硬さ(10.9)ビッカース320〜380 HV/ロックウェル32〜39 HRC 二次資料で確認硬さは上限も規定される。硬すぎることも不合格になる。
強度区分「10.9」の数字が決まる条件(JIS B 1051:2014 / ISO 898-1:2013)

筆者はこう読んだ

刻印は測定値ではない。分類ラベルである。ここを取り違えると、資料を読むたびに数字が食い違って見える。

「10.9」という記号は、呼び引張強さ 1000 MPa と呼び耐力 900 MPa という二つの呼び値から機械的に組み立てられている。呼び値は 1985年の改正で「便宜上決めた」ものだと、規格の原案を作った日本ねじ研究協会が自ら書いている。

ここで順序を取り違えないようにしたい。1000 という数字が、合否ラインに合わせてあとから選ばれたのではない。順序はむしろ逆である。

記号「10.9」は ISO 推薦規格 R 898/I:1968 に由来し、1972年の JIS 制定の時点で、すでに強度区分として載っていた。当時の引張強さは kgf/mm² で書かれており、日本ねじ研究協会の解説(表1)によれば、10.9 の最小引張強さは 100 kgf/mm²、12.9 は 120、14.9 は 140 である。点の左の数字は、その最小引張強さの 1/10 そのものだった。 「10.9」の 10 は、当時は正真正銘の最小値を指していた。

ところが 1985年の改正で ISO 898-1:1978 の N/mm² 値を採用したとき、引張強さ・降伏点・保証荷重の最小値がわずかに動いた。10.9 の最小引張強さは 1040 MPa になった。すでに世界中のボルトの頭に刻まれている記号を、いまさら「10.4」に変えるわけにはいかない。そこで、記号と辻褄の合う基準値として、引張強さ 1000 MPa・耐力 900 MPa という「呼び」の値が、便宜上あとから定められた

刻印の 1000 MPa は、かつて最小値だった数字の名残であって、いまの合否ラインではない。

この順序を理解すると、8.8 の挙動も筋が通る。8.8 の呼び引張強さは 800 MPa だが、最小引張強さは呼び径 16mm 以下で 800、16mm を超えると 830 になる。呼び値は一つなのに、合格ラインは径で二つに割れている。太いボルトは焼入れの際に中心部まで硬化させにくく、同じ熱処理でも到達できる強度が違う。それでも刻印は「8.8」のままである。記号が実態を要約しきれていないのではなく、記号はもともと実態の要約ではない。

「引張強さ」という言葉自体も、日常語より狭い。ここでの引張強さは、最大荷重を有効断面積で割った値である。有効断面積はねじ山の谷径と有効径から計算される仮想の断面積で、ボルトのどこを切ってもその面積の断面が現れるわけではない。ねじ部品の強度は、材料の性質だけでなくねじ山の形状の取り決めとセットになっている。同じ鋼材から削り出した丸棒の引張強さと、ボルトの引張強さは、定義からして別物である。この「規格上の定義を通ってはじめて数字になる」構造は、表面粗さの Ra 1.6 が測定の基準長さと評価長さを決めてはじめて意味を持つのと同じ形をしている。

強度区分がひとつの記号で束ねているのは、実は性質ではなく試験である。規格の目次には、引張試験、くさび引張試験、保証荷重試験、硬さ試験、頭部打撃試験、脱炭試験、浸炭試験、再焼戻し試験、ねじり試験、衝撃試験、表面欠陥検査が並ぶ。10.9 に合格するとは、これらのうち製品の形状とサイズに応じて選ばれた試験群をすべて通ることであって、引張強さが 1040 MPa 出ることだけを指すのではない。

なかでも保証荷重試験は、性格が他と違う。これは壊す試験ではない。指定の保証荷重を 15 秒間かけ、荷重を除いたあとに永久伸びが残っていないことを確認する。合否は「戻ったかどうか」で決まる。10.9 の保証荷重応力は 830 MPa で、最小耐力 940 MPa の 0.88 倍にあたる。この比率は規格の表に「応力比」として区分ごとに書かれており、4.6 の 0.94 から、10.9・12.9 の 0.88 まで、高強度側の区分で低くなっている。ただし 4.8 の 0.91 と 5.6 の 0.93 のように、区分の順に単調に下がるわけではない。なぜ高強度側で比が下がるのか、その理由は規格本文にも日本ねじ研究協会の解説にも書かれていない。 当サイトは推測を書かない。

くさび引張試験は、まっすぐ引く試験では見えないものを見る。頭部の座面に角度をつけた硬化くさびを挟み、軸を傾けたまま引っ張る。頭と軸の付け根に欠陥や過度な脱炭があれば、そこで頭が飛ぶ。そして規格は、くさびで斜めに引いたときの強さの要求値を、まっすぐ引いたときの最小引張強さと同じ値に置いている。斜めに引いても割り引かない。頭部の付け根は軸と同等でなければならない、という要求である。1991年の改正で、引張破断荷重 500kN 以下の製品にはこの試験を製品状態で行うことが必須化された。機械加工した試験片で材料の強さを確かめるだけでは足りない、というのがそのときの結論だった。

温度の前提も、静かに動いている。2000年の改正で試験の環境温度が 10〜35℃ に定められ、2014年版の注記1 は使用温度範囲を −50℃〜+150℃ と書く。ところが 1991年版は「300℃までの温度環境で使用できる」と備考に書いていたと、日本ねじ研究協会の解説にある。同じ規格番号、同じ強度区分の刻印でありながら、規格が想定する使用温度の上限は 300℃ から 150℃ へ下がった。手元のボルトが 1990年代の在庫なのか、2015年以降に作られたものなのかで、規格が保証している範囲は違う。刻印は変わらないが、刻印の裏にある文書は変わる。

ステンレスの「A2-70」を、鋼の 8.8 の隣に並べて比べたくなる場面がある。この二つは、規格そのものが違う。A2-70 は JIS B 1054-1:2013(耐食ステンレス鋼製締結用部品の機械的性質-第1部:ボルト,小ねじ及び植込みボルト、ISO 3506-1:2009 と一致)に基づく記号で、A2 は鋼種区分(オーステナイト系)、70 は引張強さ 700 MPa の 1/10 を表す。点で区切られておらず、降伏比も記号に含まれていない。A2-70 の 0.2% 耐力は 450 MPa で、引張強さに対する比は 0.64 ほどになるが、その 0.64 はどこにも刻印されない。JIS B 1051 の記号が「強さと降伏比」を表しているのに対し、JIS B 1054-1 の記号は「鋼種と強さ」を表している。数字の大小を並べても、同じことを測った数字ではない。等級の数字が同じ形をしていても由来が違うという点では、IP67 と IP68 の関係に近い。

遅れ破壊についても、規格の側は早くから触れている。1991年の改正で、強度区分 12.9 は遅れ破壊を起こす危険があるとして、引張応力が働く表面に光学顕微鏡で確認できる白色のりん濃化層があってはならないと規定された。土木分野では、土木研究所の構造物メンテナンス研究センターが、高力ボルト F11T について「遅れ破壊が生じやすい特徴があるため、現在では使用が禁止されています」と公表している。これは事実の記述である。当サイトは、どの強度区分を使ってよいか、手元のボルトが安全かどうかについては何も書かない。実際の判断は、有資格者・専門機関に相談してほしい。

あなたの条件ならこう読み替える

あなたが見ている数字は、どの列の数字か
図面や部品表に「10.9」とだけ書いてある
呼び値(1000/900 MPa)を指していると読む。合否判定の数値ではない。
強度区分の記号は呼び引張強さと呼び耐力から組み立てられており、規格が試験で要求する最小引張強さ1040 MPa・最小耐力940 MPaとは一致しない。
A社のカタログが「引張強さ1000MPa」、B社が「1040MPa」と書いている
呼び値を書いているか、最小値を書いているかの違いとして読む。どちらかが間違っているわけではない。
JIS B 1051 の数値表は呼び値と最小値を別の行として持っている。呼び値だけを書く資料、最小値だけを書く資料、両方を併記する資料が混在している。まず列の見出しを確認する。
同じ「8.8」でボルトの太さが違う
呼び径16mmを境に、最小引張強さが800 MPaと830 MPaに分かれることを確認する。
呼び値は共通だが、規格の数値表は8.8の行を径で二つに割っている。刻印は同じでも合格ラインが同じとは限らない。
ステンレスのA2-70と鋼の8.8を比べたい
根拠規格が JIS B 1054-1 と JIS B 1051 で別であることを先に確認する。
A2-70の「70」は引張強さ700 MPaの1/10であり、降伏比は記号に含まれない。8.8の「.8」は降伏比を表す。記号の文法が違うため、数字の大小は同じ意味を持たない。
数値そのものを引きたい(表を見たい)
早見表.net の該当ページへ。
当サイトは数値の出どころを読む場所で、早見表は作らない。

強度区分の数字が資料によって食い違って見えるのは、多くの場合、呼び値の列を見ているか最小値の列を見ているかの違いによる。各社が何を書いているかを並べると、その傾向がはっきりする。

メーカーカタログの表記脚注に書かれている測定条件
由良産商(ねじの参考書)呼び引張強さ 1000 MPa/呼び耐力 900 MPa「呼び」と明示したうえで記号の分解を説明している。このページには呼び値だけを載せ、最小値は載せていない。
浪速螺子(ねじの機械的性質)呼び 1000/最小 1040、呼び耐力 900/最小耐力 940呼び値と最小値を同じ表に並べている。保証荷重応力830 MPaと応力比0.88も併記。ただし表の見出しは1991年版(JIS B 1051-1991)に基づく。
Fastenal(ISO 898-1 技術資料)Min. Tensile Strength 1040 MPa/Min. Yield 940 MPa呼び値を載せず、最小値と保証荷重応力(830 MPa)だけを書いている。
三木プーリ(技術資料)JIS B 1051-2000 の抜粋として呼び引張強さと最小引張強さを併記出典を2000年版と明示している。現行は2014年版。
toishi.info(技術情報)呼び引張強さ 1000 N/mm²/最小引張強さ 1040 N/mm²呼びと最小を別の行に分けて併記している。ただし出典は JIS B 1051:2000(ISO 898-1:1999)で、表には現行版にない強度区分3.6も残る。
横断強度区分「10.9」の引張強さを、各資料はどう書いているか各社の公開カタログ・製品ページの記載を確認したもの。製品の優劣を比較したものではない。
確認できていないこと

規格票の数値表そのもの(箇条7)と試験方法の本文(箇条9)は有償で、当サイトは読んでいない。上の数値は、規格の原案作成団体(日本ねじ研究協会)の公開解説と、複数のメーカー・商社の技術資料が一致した範囲のものである。くさび角度の規定は、規格票の表16そのものではなく、試験機メーカーと締結部品の技術解説から再構成した。

なお、各社の技術資料は引いている規格の版がばらばらである。三木プーリと toishi.info は JIS B 1051:2000、浪速螺子は1991年版を出典としており、現行は2014年版である。古い版の表には、現行版にない強度区分3.6が残っている。同じ「JISによれば」で始まる表でも、どの版を見ているかで中身が違う。

この数字について、よく調べられている疑問

「10.9」の刻印があるボルトの引張強さは1000MPaですか。

1000MPaは「呼び引張強さ」で、強度区分の記号を作るための基準値です。規格が合否判定に使う最小引張強さは1040MPaで、刻印から計算した1000MPaとは一致しません。耐力も同様に、呼びは900MPaですが最小値は940MPaです。呼び値と最小値を混ぜて比較すると、同じボルトの数字が資料ごとに違って見えます。

「8.8」と「A2-70」はどちらが強いのですか。

根拠規格が違うため、記号の意味も違います。8.8はJIS B 1051(鋼)で、点の左が呼び引張強さの1/100、右が降伏比の10倍です。A2-70はJIS B 1054-1(耐食ステンレス鋼)で、A2は鋼種区分、70は引張強さ700MPaの1/10であり、降伏比は記号に含まれていません。数字の大小をそのまま比べる土俵になっていません。

保証荷重試験は、ボルトを破断させる試験ですか。

破断させません。指定の保証荷重を15秒間かけたあと荷重を除き、永久伸びが生じていないことを確認する試験です。合否は測定不確かさ(±12.5μm)の範囲内で塑性伸びがないかどうかで判定されます。保証荷重応力は耐力より低く設定されており、10.9では耐力940MPaに対して830MPaです。

くさび引張試験は何を見ているのですか。

頭部と軸のつなぎ目の健全性を見ています。ボルト頭部の座面に角度のついた硬化したくさびを挟み、軸を傾けた状態で引っ張ります。まっすぐ引けば通る品物でも、頭部の付け根に欠陥があれば頭が飛びます。くさび引張強さの要求値は、引張強さの最小値と同じ値が使われています。

この記事の限界

  • JIS B 1051 の規格票本文は有償で、無料で読めるのは日本規格協会が公開しているプレビュー(表紙・まえがき・目次・序文・箇条1)までである。当サイトは数値表(箇条7)と試験方法(箇条9)の本文を読んでいない。この記事の数値は、規格の原案作成団体(日本ねじ研究協会)の公開解説と、複数のメーカー・商社の技術資料が一致した範囲で書いている。
  • くさび角度の規定(円筒部長さと強度区分の組み合わせで10°/6°/4°を使い分ける)は、規格票の表16そのものを購入して読んだわけではなく、試験機メーカーおよび締結部品の技術解説から再構成したものである。1.7d と 1.9d の規定(座面径が1.7dを超えるボルトは1.7dまで機械加工して再試験してよい/1.9dを超えるボルトは10°の代わりに6°のくさびを用いてよい)は、資料間の食い違いではなく別々の規定であると理解しているが、条項番号までは確認していない。
  • 現行の JIS B 1051:2014 の強度区分は 4.6/4.8/5.6/5.8/6.8/8.8(d≤16・d>16)/9.8/10.9/12.9 の9段階で、3.6 は含まれない(由良産商のハンドブックが「4.6〜12.9の9段階」と書いており、これが現行版と一致する)。3.6 が載っている表(toishi.info、浪速螺子)は、いずれも JIS B 1051:2000/1991 版に基づく古い資料である。ただし、いつの改正で削除されたかまでは確認していない。
  • 12.9に「焼戻し温度の低い区分」が追加された経緯は日本ねじ研究協会の解説で確認したが、その区別が製品刻印にどう表れるかは確認できていない。
  • 当サイトは試験設備を持たない。この記事に実測値は一切含まれない。

出典

  1. JIS B 1051:2014 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質―強度区分を規定したボルト,小ねじ及び植込みボルト―並目ねじ及び細目ねじ/ 日本規格協会 JSA Group Webdesk / 2026-07-14 確認
  2. JIS B 1051(炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質)の改正案について(日本ねじ研究協会誌 44巻)/ 日本ねじ研究協会 / 2026-07-14 確認
  3. JIS B 1054-1:2013 耐食ステンレス鋼製締結用部品の機械的性質―第1部:ボルト,小ねじ及び植込みボルト(公開プレビュー)/ 日本規格協会 / 2026-07-14 確認
  4. Mechanical Properties Per ISO 898-1 (Externally Threaded Fasteners)/ Fastenal / 2026-07-14 確認
  5. ねじの機械的性質について/ 浪速螺子 / 2026-07-14 確認
  6. ねじの参考書 09「鋼製ボルト・小ねじ及び鋼製ナットの強度区分の表し方」/ 由良産商 / 2026-07-14 確認
  7. 鋼製ボルト・小ねじの機械的性質(JIS B 1051-2000 抜粋)/ 三木プーリ / 2026-07-14 確認
  8. ボルトの強度区分について/ 砥石メーカーの技術情報サイト(toishi.info) / 2026-07-14 確認
  9. ISO 898-1 | ISO 3506-1 — testing of threaded fasteners/ ZwickRoell / 2026-07-14 確認
  10. 高力ボルトの遅れ破壊が進む橋梁の診断/ 土木研究所 構造物メンテナンス研究センター(CAESAR) / 2026-07-14 確認

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