靴の「26cm」は足の長さで、靴の長さではない — JIS S 5037とサイズ体系の定義

カタログの数字
26cm = 足長26cm
根拠となる規格
JIS S 5037:1998(靴のサイズ)
その数字を作った試験条件
足長(かかと〜最長趾)を0.5cm刻みで表す。靴の全長ではない
前提が決まった年
1983(1998改正)
「26cm = 足長26cm」という数字の家系図。カタログの表示から、それを定めた規格と試験条件までを辿ったもの。

靴に書かれた「26cm」は、靴の長さではありません。あなたの足の長さ(足長)です。JIS S 5037 が「サイズ」と呼ぶのは足入れ寸法、つまり履く人の足長のことです。かかとのいちばん後ろから、いちばん長い趾(あしゆび)の先までを直線で測ります。この値が26.0cmなら、その足に合う靴に「26.0」と刻みます。だから靴そのものは、つま先の余り(捨て寸)や甲革の厚みのぶん、26cmより長くなります。数字が指しているのは靴ではなく足です。

しかも、長さだけでは靴は決まりません。JIS にはもう一本、足囲(ボール部の周囲長)という軸があります。E・EE・EEE… というウィズ表記がそれです。「26cmのE」と「26cmのEE」は、長さが同じで太さが違う別の靴です。海外はさらに事情が違います。US・UK・EU は刻む単位も数え始める起点も揃っていません。「US 8は何cm」に一つの答えが返らないのは、換算表が不親切だからではありません。体系の設計がそもそも噛み合っていないからです。

資料には何が書かれているか

JIS S 5037 の正式な表題は「靴のサイズ」、英文表記は “Sizing system for shoes” です。1983年に制定され、1994年と1998年に改正されました。現在有効なのは JIS S 5037:1998 です。日本規格協会(JSA)の書誌でも同じ番号・表題を確認できます。規格本文そのものは有償で、策定元の原本は開けていません。以下は、規格本文を複製した第三者資料と、JIS を採用する複数のメーカー資料が一致した範囲の要旨です。

JIS S 5037:1998 の規格本文複製(kikakurui.com)にもとづく要旨|資料の記述(要旨)(規格本文の逐語引用ではなく、複製資料から確認できた範囲の要旨)サイズの基準は足長(かかと後端から最長趾先端までの直線距離)で、0.5cm(5mm)刻みで表す。第二の軸として足囲(第一趾と第五趾の付け根まわりの周囲長)を取り、A・B・C・D・E・EE・EEE…というウィズ記号を割り当てる。表示は足長(cm)とウィズ記号(例 23E、23/E)、または足長(mm)と足幅(mm)(例 235/95)で行う。この体系は、規格の序文で ISO 9407(Mondopoint)との整合を図ったものと述べられている。

ポイントは「足長を基準にする」という一行です。メーカー各社の説明もここで揃います。ムーンスターは、靴選びに要るのは「足長」と「足囲(ウィズ)」で、ウィズは JIS が定めた足囲区分だと明記しています。アシックスも、日本のcm表示は JIS に基づき、その足長の人が履けるサイズ(つま先の余りを含む)を指すと説明しています。26という数字は足の実寸で、靴の内寸でも外寸でもありません。LED電球の「60W形相当」が消費電力ではなく明るさの目安を指すのと同じです。表に出ている数字と、それが実際に指すものが一段ずれています。

ウィズ記号は、男性で A から G までです。E より上は EE(2E)・EEE(3E)… と E の数で数える流儀もあり、上限の書き方(F・G を 5E・6E とするなど)は資料で揺れます。女性は A から F、子ども靴は B から始まる区分が示されています。いずれも足長を一方の軸、足囲をもう一方の軸に取った表です。ある足長とある足囲の交点にウィズ記号が入ります。だから同じウィズ記号でも、足長が変われば対応する足囲の実寸(mm)は変わります。ウィズは絶対的な太さではなく、長さとの組で決まる区分です。

1300
イングランドで1/3インチ=1バーレイコーンが度量衡の基礎として文書化されたとされる(起源には諸説あり) 二次資料で確認
1983
JIS S 5037「靴のサイズ」制定 二次資料で確認
1991
ISO 9407(Mondopoint)初版 二次資料で確認
1994
JIS S 5037 改正。ISO 9407 に整合 二次資料で確認
1998
JIS S 5037 改正(現行版)。女性サイズ表にウィズFを追加 二次資料で確認
2019
ISO 9407 現行版(第2版) 二次資料で確認
年表サイズを決めた単位と規格の年表(二次資料で確認)

定義・試験条件の表

試験条件の項目規定されている値・条件注記
JIS 基準軸足長(かかと〜最長趾)を0.5cm=5mm刻み 二次資料で確認靴の全長ではなく足の長さ
JIS 第二軸足囲(ボール部周囲)→ウィズ A〜G / E・2E・3E… 二次資料で確認男性で1段階ごとに足囲が約6mm増(代表値)
US・UK 刻みバーレイコーン=1/3インチ≒8.47mm 二次資料で確認1サイズ=1バーレイコーン。US男性とUK/US女性で起点が違う
EU(フレンチ)刻みパリポイント=2/3cm≒6.67mm 二次資料で確認1サイズ=1パリポイント。木型長(足長より約1.5〜2cm長い。余裕量は資料で揺れる)を刻む
Mondopoint(ISO 9407)足長をmmで表示、5mm刻み(特殊用途は7.5mm) 二次資料で確認足幅も併記可。例 280/110
各サイズ体系が『何を』『どの刻みで』測るか(二次資料で確認)

この数字をどう読むか

まず、26という数字は靴ではなく足を指します。足長26.0cmの人に向けた靴に「26.0」と刻むので、靴の内側の長さは26.0cmより長くなります。つま先には捨て寸と呼ばれる余りがあり、その量はメーカーや木型、用途(革靴かスニーカーか)で変わります。だから「26cm」を二足並べても、外寸も内寸も一致するとは限りません。数字が一致していても、指しているのは各社の足長基準で、靴そのものの寸法ではないからです。ここを取り違えると、「同じ26cmなのにきつい・ゆるい」がなぜ起きるのか説明できなくなります。

日本のcm表記は、足を測る物差しです。靴を測る物差しではありません。靴の中に足を入れたときに残る余裕をどれだけ取るかは、木型(ラスト)を設計する側の裁量です。JIS が定めるのは「その足長の人に向けて作れ」という対応づけで、木型の長さそのものを一律には固定していません。だから同じ26.0cmでも、細身の革靴と厚みのあるスニーカーでは、内部に確保された長さも幅も変わります。数字は足の側で固定され、靴の側は作り手ごとに動きます。

次に、長さは靴を決める軸の一本目でしかありません。JIS にはもう一本、足囲という軸があります。それが E・EE・EEE というウィズです。足長が同じでも、足囲が太ければウィズは上がります。「26cmのE」と「26cmの3E」は、長さが同じで太さが違う別々の靴です。長さと太さは一つの数字に畳み込めません。だから「26cm」だけでは情報が足りません。タイヤの「205/55R16」が幅・扁平率・内径をまとめて並べているのと同じで(/home/tire-size/)、靴も本来は長さと囲みの二つで決まります。片方だけを見て合う・合わないは決められません。

三つめは、海外表記が綺麗に換算できない理由です。US・UK は1サイズを1バーレイコーン、つまり1/3インチ(約8.47mm)で刻みます。中世英国にさかのぼる、麦粒に由来する単位です。一方 EU(フレンチ)は1サイズを1パリポイント、2/3cm(約6.67mm)で刻みます。刻み幅がそもそも違います。さらに、番号を数え始める起点も揃っていません。US男性、UK、US女性で、同じ足長に付く番号がずれます。刻む単位が違い、起点も違うので、ある体系の目盛りを別の体系の目盛りにぴったり重ねることはできません。換算表が「だいたい」でしか書けないのは、作る人が手を抜いているからではありません。目盛りの取り方が最初から食い違っているからです。

だから「US 8は何cm」に一つの答えは出ません。番号から足長cmへ戻すには、二段階が要ります。まず US 8 を木型の長さに直し(番号×単位+起点)、そこから捨て寸を引いて足長にします。ところが起点も捨て寸も、体系やメーカーで共有されていません。入口で値が一つに定まらないので、出口の足長cmも一つに定まりません。US 8 が指す足長は、資料やブランドで1〜2サイズ分ほど揺れます。この揺れは測定の誤差ではなく、体系の設計に由来するものです。上下関係のように見えて実は別条件で定義されている IPX7 と IPX8 と同じです。番号の大小が、そのまま一本の物差しの上の位置を表すとは限りません。

最後に、足の実寸をそのまま数字にする体系は、すでに実用されています。JIS と ISO 9407 が採る Mondopoint は、足長をmmで表し、必要なら足幅を添えます。番号でも起点でもなく、測った長さを書くだけです。理屈のうえでは最も混乱が少ない方式です。日本のcm表記も、この足長を基準にする考え方の仲間です。参照した Wikipedia「Mondopoint」によれば、この方式は日本・中国・韓国・ロシアなどで主要な靴サイズ方式として採用され、スポーツ用品や軍でも広く使われ、英・EU では任意採用にとどまります。一方で、英米式やフレンチ式の番号が根強く残る市場もあります。※ ただし、どの体系が小売でどれだけ優勢かを直接比較した出典は、当サイトが確認できた範囲では見つかりませんでした。規格が悪いという話ではありません。足の実寸を測る体系と、歴史的な番号を数える体系が並んで使われていて、私たちは日々その二つを行き来しています。

あなたの条件ならこう読み替える

手元にある「US 8」を何cmと読むか
表記がUSの番号だけ
そのUSがメンズかレディースか、どの資料・ブランドの換算表かをまず特定する
US男性とUK/US女性は起点が違い、同じ「8」でも指す足長がずれるから
自分の足長を実測できる
JISやMondopointのcm(=足長)で照合し、US/UK/EUはブランド換算表を経由する
cm=足長は定義が一つに決まるが、番号系の起点は資料で揺れるから
幅(きつさ・ゆるさ)が気になる
足長だけでなく足囲(mm)も測り、ウィズ表記のある製品で合わせる
長さは一本目の軸でしかなく、足囲は独立した二本目の軸だから

読み替えの筋は単純です。cmで書かれた数字(JIS・Mondopoint)は足長という一つの定義に着地します。まず自分の足長を実測して、それを基準に置きましょう。US・UK・EU の番号は、ブランドごとの換算表を一枚かませて対応させます。番号どうしを直接つなぐより、いったんcm(足長)を経由したほうが、どの体系のどの起点で数えているかを見失いにくくなります。幅が気になるなら、足囲(mm)も測って、ウィズ表記のある製品で合わせます。長さと囲みは別の軸なので、片方を決めてももう片方は決まりません。

メーカーカタログの表記脚注に書かれている測定条件
ムーンスター(日本)足長cm + ウィズ E・2E・3E…JISの足囲区分をそのまま採用
アシックス(日本)足長cm + ウィズ(幅を語で示す製品もある)cmはJIS準拠の足長。捨て寸を含む
US/UK(英米)番号(1/3インチ刻み)US男性・UK・US女性で数え始めが違う
EU(フレンチ)番号(2/3cm刻み)木型長をパリポイントで。男女共通の番号
横断各社・各体系がサイズをどう表記するか各社の公開カタログ・製品ページの記載を確認したもの。製品の優劣を比較したものではない。

ここまでが、サイズ体系の定義から言えることです。どのサイズを買うべきかは、足の形も履き方も人それぞれなので、定義の側からは決められません。定義から言えるのは、その数字がどの条件で作られたか、あなたの条件とどこがずれているか、までです。26cm はあなたの足の長さで、靴の長さではありません。US 8 はある番号体系の目盛りの位置で、cmではありません。出発点の違う目盛りどうしを重ねようとすると、必ずどこかに「だいたい」が残ります。その残り方を知っておくと、換算表の一行を読むときに迷いません。

この数字について、よく調べられている疑問

日本の「26cm」は靴の長さですか。

靴そのものの全長ではなく、履く人の足の長さ(足長)を指す。JIS S 5037はかかとから最長趾までの直線距離を0.5cm刻みで表し、その足に合う靴に印字する。靴の内寸は、つま先の余り(捨て寸)や甲革のぶんだけ足長より長い。同じ「26cm」でもメーカーや木型で捨て寸が違うため、靴の実寸は一定ではない。

なぜ「US 8」は何cmと一つに決まらないのですか。

US・UKは1/3インチ(バーレイコーン、約8.47mm)刻み、EUは2/3cm(パリポイント、約6.67mm)刻みで、単位そのものが違う。さらにUS男性とUK・US女性では番号の数え始めが揃っていない。番号から足長cmへ戻すには木型長と捨て寸を挟む必要があり、その値も共有されていない。だから一意の換算値が存在しない。

E・EE・EEE(ウィズ)は何を表しますか。

足の太さ、正しくは足囲(親指と小指の付け根まわりの周囲長)の区分で、JISが定める。長さとは別の独立した軸で、A・B・C・D・E・EE…と太くなる。男性で一段階ごとに足囲がおよそ6mm増える(代表値)。同じ足長でもウィズが違えば別の靴で、長さだけでは靴は決まらない。

Mondopointとは何ですか。

ISO 9407が定める体系で、足長をmmで表し、必要なら足幅を併記する(例 280/110)。刻みは5mm、特殊用途では7.5mm。JIS S 5037もこれに整合させている。足の実寸をそのまま数字にする方式で、参照したWikipedia「Mondopoint」によれば、日本・中国・韓国・ロシアなどで主要方式として採用され、スポーツ用品や軍でも広く使われる。一方で英米式・フレンチ式の番号が根強い市場もあるが、どちらが小売で優勢かを直接比較した出典は当サイトの確認範囲では見当たらなかった。

この記事の限界

  • 公式のJIS S 5037本文(JSAで有償)とISO 9407本文(ISOで有償)は開けていない。規格番号・正式表題・基準(足長)・ISO整合という事実は、規格本文の複製・策定/販売元の書誌・複数メーカー資料の一致で確認したが、条項単位の原文照合はしていない。
  • US/UK番号とcmの対応、US男性・US女性・UKの起点差は、資料やブランドで1〜2サイズ分ほど揺れる。本文は「刻む単位も起点も違うので一意に換算できない」ことまでを示し、特定の換算値は載せない。
  • ウィズ(足囲)の刻み(男性で1段階+約6mm)や上限記号(F・Gを5E・6Eとするなど)は資料間で表記が揺れる。代表値として示した。
  • ISO 9407は2019年版が現行だが、JIS S 5037:1998が参照するのは当時の1991年版とみられる。両版の対応の細部は原文未確認。
  • EU式の「木型長=足長+余裕」の余裕量は、当サイトが引用する資料間で食い違う。internationalshoesizes.comは約2cm、Wikipedia「Shoe size」は13〜17mm(約1.5cm)とする。本文・図版では1.5〜2cmの幅として示した。
  • Mondopointが一般小売でどの程度普及しているかを直接示す出典は、当サイトが確認できた範囲では見つからなかった。参照したWikipedia「Mondopoint」は、この方式が日本・中国・韓国・ロシアなどで主要方式として採用され、スポーツ用品・軍で広く使われ、英・EUでは任意採用にとどまると記すが、小売での優劣は論じていない。

出典

  1. JIS S 5037:1998 靴のサイズ(書誌)/ 日本規格協会(JSA Group Webdesk) / 2026-07-15 確認
  2. ISO 9407:2019 Footwear sizing — Mondopoint system of sizing and marking/ ISO(国際標準化機構) / 2026-07-15 確認
  3. 足のサイズ測り方・シューズサイズ表/ アシックス / 2026-07-15 確認
  4. ISO 9407:2019—Footwear Sizing/ The ANSI Blog / 2026-07-15 確認

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