抵抗器のカラーコード 色帯が表すのは数字・乗数・許容差、そして本数
抵抗器の胴に巻かれた色の帯は、規格が決めた数字の符号です。黒を0、茶を1、赤を2と数え、白の9まで続きます。その後ろの帯が乗数と許容差を表します。たとえば茶・黒・赤・金なら、茶1と黒0で有効数字「10」、赤が10²倍の乗数、金が許容差±5%です。10×100で1000、つまり1kΩ・誤差±5%と読めます。ただし同じ色の並びでも、帯が4本か5本かを数えないと、有効数字が2桁か3桁か決まりません。数え間違えると、出てくる値そのものが変わります。色そのものに固定の値があるわけではなく、位置で意味が決まる符号だからです。
この読み方を定義しているのは、二つの規格です。抵抗値の刻みを決める国際規格 IEC 60063 と、その値を色帯や記号でどう書くかを決める IEC 60062 です。日本ではかつて JIS C 5062 が対応していました。ただし当サイトが確認した範囲では、その番号はもう現行ではありません。
資料には何が書かれているか
IEC 60062 の本文は、色帯の読み方を短く、過不足なく定義しています。
IEC 60062:2016 箇条3.1・3.2(当サイトによる要旨訳)|資料の記述(要旨)黒・茶・赤・橙・黄・緑・青・紫・灰・白の10色を、各桁の有効数字0〜9に割り当てる。これに銀・金・桃(ピンク)を加えた色で、乗数・許容差・抵抗温度係数を符号化する。帯は端に最も近い側を第1帯として順に置き、許容差を示す帯の幅は他の帯の1.5倍以上とする——と規定している。
色と数字の対応は、暗記するものではありません。規格の表1にそのまま書かれた割当てです。黒0・茶1・赤2・橙3・黄4・緑5・青6・紫7・灰8・白9。金・銀・桃は有効数字には使いません。乗数(金=×0.1、銀=×0.01、桃=×0.001)と許容差(金=±5%、銀=±10%)にだけ使います。温度係数(TCR)には使いません。TCRは表1で黒±250・茶±100…灰±1(単位10⁻⁶/K)のように、黒〜灰の有効数字色の側に割り当てられています。金・銀・桃のTCR欄は空欄です。桃はさらに乗数専用で、許容差も持ちません。桃を乗数10⁻³として加えたのは2016年の第6版が最初で、それ以前の版にはありませんでした。記号の一つひとつが規格の表の座標を指しています。番号の座標が寸法そのものであるベアリングの型番と同じ考え方です。
日本語の規格は、少し事情が込み入っています。抵抗器の表示記号を定めていた JIS C 5062:2008 は、2019年に廃止され JIS C 60062:2019 に置き換えられました。当サイトが読んだ日本規格協会の公開プレビューによる情報です。新しい JIS は IEC 60062:2016(2016年12月のCorrigendum 1を含む)と一致(IDT)で、附属書Xに旧 JIS C 5062 との対比表を置いています。※番号だけを覚えていると、すでに置き換わった規格を根拠にしてしまいます。
色帯は、複数ある表記法の一つにすぎません。IEC 60062 は同じ抵抗値を、RKMコードと呼ぶ文字記号でも、数字だけのコードでも書けるように定めています。RKMコードは、1kΩを1K0、1MΩを1M0のように、単位記号を小数点の位置に置く書き方です。表面実装のチップ抵抗に色帯がほとんど無く、代わりに「102」「1001」といった数字が刷られているのも、このためです。胴が小さくて帯を巻けないぶん、規格が用意した別の符号系に切り替わっています。色帯は、リード付きの円筒形部品という形に合わせて選ばれた符号化です。値を運ぶ役目そのものは、文字コードと変わりません。
色が担う役割と、帯の本数
色帯を難しくしているのは、同じ色が桁ごとに違う役割を負う点です。下の表は、一つの色が「有効数字」「乗数」「許容差」「温度係数」のどこに置かれるかで意味が変わることを、IEC 60062:2016 の表1から整理したものです。
| 試験条件の項目 | 規定されている値・条件 | 注記 |
|---|---|---|
| 黒〜白(10色) | 有効数字 0〜9 一次資料で確認 | 黒0・茶1・赤2・橙3・黄4・緑5・青6・紫7・灰8・白9 |
| 金 / 銀 / 桃 | 乗数 ×10⁻¹ / ×10⁻² / ×10⁻³ 一次資料で確認 | 桃(ピンク)は2016年の第6版で新設 |
| 金 / 銀 / 無帯 | 許容差 ±5% / ±10% / ±20% 一次資料で確認 | 3本帯(第4帯なし)は規格上±20%を意味する |
| 茶〜灰 | 許容差 ±2%〜±0.01% / TCR 一次資料で確認 | 精密級の許容差(茶±1%・赤±2%…灰±0.01%)と温度係数(10⁻⁶/K)にも色を割り当てる |
役割の切り替えを決めるのは「帯の本数」です。IEC 60062 の 3.3 が、本数ごとに読み方を分けています。3本帯は有効数字2桁+乗数で、第4帯が無いこと自体が許容差±20%の符号になります。4本帯は、そこに許容差の帯が1本加わります。5本帯は有効数字が3桁に増え、乗数・許容差がそれぞれ1本ずつ後ろに続きます。6本帯は5本帯の末尾に、抵抗温度係数(TCR)の帯がもう1本付きます。※TCRの帯は、有効数字3桁の抵抗にだけ追加できると規格が限定しています。本数は品質の「等級」ではありません。4本か5本かは精度の優劣ではなく、有効数字を2桁で書くか3桁で書くかという表記の違いです。IPX7とIPX8が上下関係ではないのと同じです。
同じ1kΩ・±5%の抵抗は、色帯以外の符号でも書けます。
| メーカー | カタログの表記 | 脚注に書かれている測定条件 |
|---|---|---|
| 色帯(4本) | 茶・黒・赤・金 | IEC 60062 箇条3 |
| 文字記号(RKM+許容差) | 1K0 J | IEC 60062 箇条4・5(J=±5%) |
| 標準数列 | E24系列の1.0×10³ | IEC 60063 表1 |
読み違えやすいところ
色帯には向きの表示がありません。左右どちらから読むかは帯の並びだけでは決まらず、ここに読み違いが入り込みます。よく知られた手がかりは「金か銀の帯を右端にして左から読む」です。金・銀は許容差の位置にしか現れない色なので、見つかれば末尾を特定できる、という理屈です。実務ではよく効きます。ただし、規格そのものの規定とは少しずれています。
IEC 60062 が実際に定めているのは二つです。まず、第1帯は「抵抗器の端に最も近い側」に置きます。次に、許容差を表す帯の幅は、他の帯の1.5倍以上にします。向きは色ではなく、「端からの距離」と「帯の太さ」で判断します。金・銀を探す手がかりは、この規定から出てくる副産物です。
この違いが効いてくるのが、5本帯の精密級です。許容差±1%は茶色で表します。茶は有効数字の1でもあるので、5本帯で両端に茶が来ると、金銀の手がかりは使えません。ここで頼れるのは、太い方の帯が許容差側だという規定と、第1帯が端に近いという位置の規定です。第6版の注記によれば、かつては温度係数の帯を許容差より太くしていましたが、許容差との混同を招いたため、太い帯は許容差だけに保つよう改めました。帯の太さは、向きを決めるための合図です。
帯が「無い」ことに意味を持たせるのも、この符号系の癖です。3本帯の抵抗は、第4帯を省いた状態そのものが±20%という情報になります。何も塗られていない領域が符号の一部です。だからこそ、最初に本数を数える必要があります。4本のつもりで3本帯を読むと、乗数の帯を許容差と取り違え、桁がまるごとずれてしまいます。
温度係数の帯も補っておきます。6本目のTCRは、抵抗値が温度でどれだけ動くかを示す別の量で、単位はppm/K(10⁻⁶/K)です。抵抗値の計算には関与しません。5本帯の抵抗にこの1本が足されているとき、末尾を許容差と読み違えると、存在しない桁を値に混ぜてしまいます。規格がTCRの色符号を有効数字3桁の抵抗にだけ許したのは、読み手が本数からその抵抗のおおよその格をつかめるようにする狙いもありそうです。
もう一つ、なぜ抵抗値が「10・12・15・18・22…」と中途半端なのか。これは色帯ではなく、色帯が符号化している値の側の話です。IEC 60063 のE系列が決めています。E24は、初項1・公比が「24乗して10になる比」(約1.10)の等比数列を、2桁に丸めた24個の値です。等差ではなく等比にするのは、隣り合う値の許容差範囲が重なりすぎないようにするためです。規格は±10%にE12、±5%にE24、±1%にE96……という対応を推奨しています。系列の名前3・6・12・24・48・96・192が、3を2倍・4倍と倍々にした数(r=3×2ⁿ)で並ぶのも、このためです。おもしろいのは、IEC 60063 自身が「E24の27〜47と82は厳密な数式からずれているが、歴史的経緯から修正していない」と注記している点です。規格の値は純粋な数学ではなく、1952年以前の商習慣を引き継いだ折衷でもあります。一つの記号が複数の役割を担う点は、SDカードのV30と速度クラスが並存する構図と通じます。
あなたの条件ならこう読み替える
手元の抵抗を前にしたら、規格の定義は次のように読み替えられます。
色帯は色の暗記表ではありません。位置と本数と太さで意味が決まる符号系です。黒0から白9までの割当ては、規格の表に書かれた座標です。金・銀・桃は、乗数と許容差のために用意された別枠の色です(温度係数は、金・銀・桃ではなく黒〜灰の有効数字色が担います)。そしてその根拠は、いまや JIS C 5062 ではなく、IEC 60062 と、それに一致する JIS C 60062 に置かれています。
この数字について、よく調べられている疑問
どちらにもなる。金は乗数の位置にあれば×10のマイナス1乗(0.1倍)、末尾の許容差の位置にあれば±5%を表す。IEC 60062は帯を端から順に読むと定めており、同じ金色でも並びの何番目に来るかで意味が決まる。銀も同様に×0.01倍と±10%を兼ねる。
有効数字2桁と乗数の3本で、第4帯が無いこと自体が許容差±20%を表す符号になる。IEC 60062の3.3.1が、2桁+乗数の3本帯で第4帯の欠落が±20%を意味すると規定している。本数を数えず4本と取り違えると値も誤差も変わる。
IEC 60063が定めるE系列という等比数列だから。E24は24乗して10になる比(約1.10)で1桁を刻み、2桁に丸めた値が並ぶ。隣り合う値の許容差範囲が重なりすぎないよう比を決めており、±5%にはE24、±10%にはE12が対応づけられている。
この記事の限界
- 色帯の「黒0〜白9」という数字割当てが最初にどの規格・どの年で定められたかは、当サイトが読めた一次資料(IEC 60062:2016、IEC 60063:2015、JIS C 60062:2019のプレビュー)からは特定できなかった。本文中の年代は各版の序文で確認できた範囲にとどめている。
- 規格の全文は有償で、当サイトが参照したのは各規格の無償プレビューPDFの範囲にとどまる。ただし色と数値の対応(IEC 60062:2016 表1)・帯の本数規定(箇条3)・E系列の導出(IEC 60063:2015 箇条4〜5・表3)は、いずれもこのプレビューに全文が含まれ、表1と配色図(図1〜6)で直接確認した。なお表1の色見本は同表の注記2により「参考例であって規範ではない」とされる。有償の全文(許容差の文字コード表など後半部)は参照していない。
- JIS C 5062:2008の細部はkikakurui.com掲載の再録で確認しており、日本規格協会の正本そのものではない。
- 現物の帯は退色・照明・メーカー独自表記で規格どおりに読めない場合がある。当サイトは試験設備を持たず、現物での読み取り検証は行っていない。
出典
- JIS C 60062:2019 抵抗器及びコンデンサの表示記号(再録)/ kikakurui.com / 2026-07-15 確認
- JIS C 5062:2008 抵抗器及びコンデンサの表示記号(再録)/ kikakurui.com / 2026-07-15 確認
- 抵抗器の表記(カラーコード・許容差・E数列)/ KOA株式会社 / 2026-07-15 確認
- 抵抗器のカラーコード|読み方・計算方法/ パナソニック インダストリー / 2026-07-15 確認
- 抵抗の値はなぜ中途半端なの(E系列の話)/ しなぷすのハード製作記 / 2026-07-15 確認
訂正履歴
- 2026-07-16本文の「金・銀・桃は温度係数にだけ現れる」は誤りだった。IEC 60062:2016 表1では温度係数(TCR)は黒±250・茶±100…灰±1 の有効数字色に割り当てられ、金・銀・桃のTCR欄は空欄。金・銀・桃は乗数・許容差のみに使われ温度係数には使われない、と訂正した。
- 2026-07-16図版「色が置かれる位置と意味」の許容差レンジ表記を「±1%〜±0.01%」から「±2%〜±0.01%」へ訂正した(茶〜灰の範囲には赤±2%が含まれるため)。
この記事を書いた人
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