コピー用紙「64g/m²」と四六判「90kg」——坪量と連量は別の数え方
コピー用紙の「64g/m²」は、その紙を1平方メートルに切り出したときの質量が64グラム、という意味です。1枚の重さでも1束の重さでもありません。面積あたりの質量です。一方、印刷や製本の見積もりに出てくる「四六判90kg」の90kgは、まったく別の数え方です。原紙を規定の寸法で1000枚重ねた「1連(れん)」の総質量が90キログラム、という意味になります。前者を坪量(つぼりょう)、後者を連量(れんりょう)と呼びます。どちらも紙の重さですが、片方は1m²あたりのグラム、もう片方は1000枚あたりのキログラムで数えます。単位が違うだけでなく、基準にしている面積そのものが違います。
ここに紙の厚みを取り違える落とし穴があります。「90kg」という数字は、それだけでは紙の厚さを決めません。連量は原紙1連=1000枚の総質量なので、原紙の寸法が大きいほど数字は大きくなります。同じ厚さ・同じ坪量の紙でも、大きい判で数えれば連量は重く、小さい判なら軽く出ます。「90kgの紙」と言われても、何判の90kgかが分からなければ、実際の厚みは特定できません。
この二つの数え方は、同じ紙業界のなかで両方使われています。事務の現場ではコピー用紙やプリンタ用紙のように坪量(g/m²)で呼び、印刷や製本の現場では連量(kg)で発注します。使う人が変われば、同じ厚さの紙が別の数字で呼ばれます。どちらが正しいという話ではなく、用途ごとに二つの物差しが残っているだけです。以下では、この二つが何を基準にした数字なのかを、用語規格の定義まで戻って読み分けます。
資料には何が書かれているか
用語の根拠は、日本産業規格の用語規格にあります。当サイトが採録本文で確認した範囲では、坪量と連量は次のように定義されています。
JIS P 0001:1998(紙・板紙及びパルプ用語/採録本文で確認)|資料の記述(要旨)坪量は「紙及び板紙の面積1平方メートル当たりの質量をグラムで表した値」。連量は「1連の紙の質量。我が国ではキログラムで表す」。連は「取引上の一単位」で、平判は規定寸法に仕上げた紙1000枚、板紙は100枚を指す。標準原紙寸法として、A列本判は625×880mm、B列本判は765×1085mmと定義されている。
坪量は「1m²あたり」という固定のものさしで数えるので、判が違っても同じ紙なら同じ数字になります。連量は「1連=1000枚あたり」で数えるため、1枚の面積、つまり原紙の判で数字が変わります。連量が判に左右されるのは、規格の定義そのものから来ています。
「連」は紙の取引単位です。平判は1000枚で1連ですが、板紙は100枚で1連という違いも定義に含まれています。同じ「1連」でも、紙か板紙かで枚数が変わります。連量を読むときは、判の寸法だけでなく、この1連が何枚かも前提になります。ふだん目にするコピー用紙や上質紙は、平判=1000枚のほうです。
坪量そのものの測り方は、別の規格が定めています。正式には「JIS P 8124:2011 紙及び板紙―坪量の測定方法」で、英文表題は Paper and board – Determination of grammage、対応国際規格はISO 536:1995(MOD)です。規格番号と表題は日本規格協会の公式書誌ページで確認しました。中身の試験条件は採録本文で読みました。
定義・試験条件
| 試験条件の項目 | 規定されている値・条件 | 注記 |
|---|---|---|
| 測る量 | 単位面積の質量(g/m²) 二次資料で確認 | 1枚でも1連でもなく1m²に換算 |
| 試験片の面積 | 500〜1,000 cm²(理想200×250mm) 二次資料で確認 | 特別な場合の最小は100cm² |
| 試験片の枚数 | 20枚以上(500〜1000cm²のとき) 二次資料で確認 | 1000cm²超なら10枚以上 |
| 調湿 | JIS P 8111による 二次資料で確認 | 調湿坪量を測る場合 |
| はかりの精度 | 質量の0.5%以内 二次資料で確認 | 感量は質量の0.2%相当 |
同じ紙が判ごとに違う「連量」で呼ばれることは、換算表を横に読むとよく分かります。次は坪量157.0g/m²の上質紙という同じ紙を、判を変えて連量で表した例です。
| 試験条件の項目 | 規定されている値・条件 | 注記 |
|---|---|---|
| 四六判(788×1091mm) | 135 kg 二次資料で確認 | 原紙面積 約0.86m² |
| 菊判(636×939mm) | 93.5 kg 二次資料で確認 | 約0.60m² |
| A列本判(625×880mm) | 86.5 kg 二次資料で確認 | 0.55m² |
数字をどう読み解くか
連量は、1枚あたりの重さを、その紙の面積のまま1000枚ぶん束ねた数字です。だから連量の「kg」には、坪量(g/m²)と原紙寸法(m²)と枚数(1000枚)が入っています。単位はキログラム一つに見えますが、中身は複数の量の掛け算です。単位が一つに見えて実は混ざっている点は、タイヤの「205/55R16」がミリとパーセントとインチを一つの表記に詰め込んでいるのと似ています。その数字がどの量を固定して、どの量を動かしているのかを意識しないと取り違えます。
坪量は原紙寸法を割り算で消したあとの値なので、紙そのものの素性を表します。連量は割り算をしていないぶん、原紙寸法が数字に残ります。計算し直すと、その差がはっきりします。四六判(788×1091mm)の面積はおよそ0.86m²で、90kgを面積で割り戻すと坪量104.7g/m²になります。これは日本製紙の上質紙の製品表でも、四六判90kg=104.7g/m²=紙厚120μmとして確認できました。同じ製品表で、四六判55kg=64.0g/m²=78μmです。つまりコピー用紙の64g/m²は、印刷の言い方に直せば四六判55kg相当で、ほぼ同じ厚さの紙を指します。
問題は判が変わったときです。原紙面積の小さいA判(625×880mm、0.55m²)で「90kg」といえば、計算上は坪量およそ164g/m²になります。菊判(636×939mm)なら約151g/m²です。四六判の90kg(104.7g/m²)とは、指している紙がまるで違います。「90kg」だけを見て厚さを推し量ると、判の取り違えのぶんだけ丸ごとずれます。数字が実物の量ではなく、原紙寸法という座標の上に乗った表示である点は、ベアリング「6203」の番号が寸法の座標であるのと同じです。連量の数字は、判という座標がないと意味が定まりません。
原紙の判が複数あるのは、日本の洋紙が明治期に別々の輸入紙から広まったからです。四六判は、イギリスから入ったクラウン判(およそ787×1092mm)を32面に裁ち、化粧断ちすると横4寸×縦6寸の書物になったことから、その名が付いたと伝わります。菊判はアメリカの標準判(およそ25×37インチ)に由来します。当時この紙のアメリカでの商標がダリア(洋花)だったこと、新聞の「聞」の字が「キク」とも読めることなどが重なり、菊の花の標識を付けて「菊印」として売り出したことにちなむと伝わります。出発点の違う原紙がそれぞれ生き残ったため、同じ坪量の紙にも四六判・菊判・A判・B判という複数の連量表示が並びます。連量が判に左右されるのは、この歴史の名残でもあります。数字を大小で比べたくなりますが、比べる前に、同じ判の上の数字かを確かめてください。
もう一つ、坪量と厚みは別の軸です。坪量は面積あたりの質量で、厚みそのものではありません。厚みは坪量を密度で割った値なので、密度(かさ)が違えば同じ坪量でも厚みは変わります。日本製紙の上質紙は64.0g/m²で紙厚78μmですが、一般のコピー用紙は同じ64g/m²前後でも紙厚はおよそ90μm(0.09mm)とされます。コート紙のように密度の高い紙は、同じ坪量でも薄く感じます。重さと厚さは比例しません。「90kgの上質紙」と「90kgの嵩高紙」は、坪量が同じでも厚さが違います。厚みで選びたいなら、坪量でも連量でもなく、製品表の紙厚(μm)を見てください。この「数字は直接の量ではなく、決められた前提の上の表示」という関係は、LED電球の『60W形相当』が消費電力ではなく明るさの目安として置かれているのと同じです。
あなたの条件ならこう読み替える
覚えることは一つだけです。連量を見たら、まず何判かを確かめ、その判の原紙面積で割って坪量に戻します。坪量は判に左右されないので、ここで初めて別の紙と比べられます。坪量まで戻したうえで、厚みが要るなら製品表の紙厚を当たります。連量のkgをそのまま厚みの目安に使うと、判の違いと密度の違いという二つのずれを同時に見落とします。
コピー用紙を1包み買うだけなら、坪量(g/m²)だけ見ていれば足ります。数字が大きいほど厚く、しっかりしている、という素直な読み方で構いません。物差しが一つに揃っているからです。一方、印刷用紙を判で発注する場面では、連量の数字は判とセットでないと意味を持ちません。四六判135kgと菊判93.5kgとA判86.5kgは、坪量に直せばどれも157.0g/m²で、同じ紙を別の判で数えただけです。数字が同じでも前提が違えば、別の紙です。逆に数字が違っても、前提を揃えれば同じ紙になります。この一点さえ外さなければ、連量の取り違えは起きません。
この数字について、よく調べられている疑問
重さの表し方が違うだけで、坪量に直すとどちらも64g/m²で、ほぼ同じ厚さの紙を指します。64g/m²は1平方メートルあたりの質量、55kgは四六判(788×1091mm)の原紙を1000枚重ねた1連の総質量です。四六判の面積で割り戻すと55kgは64.0g/m²になります。
判を添えないと決まりません。連量は原紙1連=1000枚の総質量なので、原紙が大きい判ほど数字は大きく出ます。四六判の90kgは坪量104.7g/m²ですが、原紙面積の小さいA判で90kgといえば、計算上は坪量およそ164g/m²で、まったく別の厚みの紙になります。
同じとは限りません。坪量は面積あたりの質量で、厚みは密度(かさ)にも左右されます。上質紙・嵩高紙・コート紙は密度が違うため、同じ坪量でも紙厚(μm)が変わります。厚みを知りたいときは、メーカーの製品表で坪量に対応する紙厚を見る必要があります。
この記事の限界
- 規格の本文は有償。JISの用語定義と試験条件は第三者採録サイト(kikakurui.com)で読み、公式の日本規格協会サイトでは規格番号と表題のみ照合した。定義文の一字一句を原本で突き合わせたわけではない。
- 四六判(788×1091)と菊判(636×939)は、当サイトが確認した範囲ではJIS P 0001の用語規格に寸法の定義が見当たらず、慣用の取引寸法をメーカー・業界団体の資料で確認した。文献により四六判を787×1092と記すものもあり、1mm前後の差がある。JIS P 0001が寸法を定義しているのはA列本判(625×880)とB列本判(765×1085)。
- 菊判90kg・A判90kgの坪量(およそ151/164 g/m²)は、原紙寸法から当サイトが計算した参考値。製品表で直接確認できたのは四六判90kg=104.7g/m²まで。
- 坪量と紙厚(μm)の対応はnpi上質という特定製品の値。密度の違う紙では、同じ坪量でも厚みは異なる。
- 連・連量は取引慣行に根ざす概念で、板紙は1連=100枚など判・品種による例外がある。連量が使われ始めた年代そのものは特定していない。
出典
- JIS P 8124:2011 紙及び板紙―坪量の測定方法(書誌)/ 日本規格協会 / 2026-07-15 確認
- JIS P 0001:1998 紙・板紙及びパルプ用語(採録)/ kikakurui.com / 2026-07-15 確認
- JIS P 8124:2011 紙及び板紙―坪量の測定方法(採録)/ kikakurui.com / 2026-07-15 確認
- 紙の坪量・連量|紙の基礎知識/ 竹尾 / 2026-07-15 確認
- 紙の単位(坪量、連、連量)/ 日本紙パルプ商事 / 2026-07-15 確認
- npi上質 印刷用紙/ 日本製紙 / 2026-07-15 確認
- 四六判・菊判の語源を教えてください/ JAGAT / 2026-07-15 確認
- 用紙の厚さ・重さについて[連量・米坪量 一覧表]/ DDC / 2026-07-15 確認
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